22: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:07:12.81 ID:F1z6JHSwo
日記にこそ書き残してはいますが、しおりの事をあまり鮮明に覚えていないのは、
とらえどころのない子だったからなのでしょう。
平仮名三つのしおりの字は、まだ漢字のそう多くはない頃の日記の中に溶けて埋もれてしまっていて。
23: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:07:43.44 ID:F1z6JHSwo
……それに。
私は多分、しおりを”個”として受け止めていなかったのだと、そう思います。
24: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:08:31.22 ID:F1z6JHSwo
会うたびに彼女はどこか違っていて……、
はっきりとした”格”が無くて、いつの間にか隣にいる。
25: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:08:58.28 ID:F1z6JHSwo
ーーー
曾祖父の通夜の日に、「波の花」と言う言葉……いえ、言い回しというべきでしょうか、それを初めて知りました。
26: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:09:42.62 ID:F1z6JHSwo
忌み言葉、というのだそうです。
式の会場で見つけた活字の中で、一際私の目を引いたのがその言葉でした。
27: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:11:18.89 ID:F1z6JHSwo
少しでも気が紛れると思ったのでしょうか、お姉さんはそれについて私にいくつかのことを話してくれて。
28: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:12:00.34 ID:F1z6JHSwo
そのお姉さんの話は、私の気を紛らわすとともに、また別の考えを私の中に残して行きました。
29: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:12:43.76 ID:F1z6JHSwo
参列の間、しおりは隣にはいてくれませんでした。
この奇妙な感情を共有してはくれませんでした。
30: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:13:12.14 ID:F1z6JHSwo
少し大人びて…いえ、ませていた、と言うべきでしょうか。
早熟な子だったと自分でも認識しています。
ですから、生きるとか死ぬとか言うことは、その頃にはもう何度も考えたことがあって。
31: ◆pdkDwyOMVs[sage saga]
2017/08/10(木) 03:13:40.18 ID:F1z6JHSwo
……なのに。
親族の葬式という、初めて人の死が身近になったその時、
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