6:エミル
2017/09/10(日) 13:30:46.52 ID:WhdXOhDy0
少女
「ぁ――――」
嘆息に、微かな声が混じって消えた。
他のどんな要素も不純物に成り下がるほどに、その少女の存在は、精霊であるエミルと同じ位の圧倒的存在だった。
まるで、金属のような、布のような、不思議な素材で構成されたドレスにエミルは目を引いた。
そこから広がった光のスカートも、綺麗だった。
しかし彼女自身の姿容は、それらが脇役に霞ませるものだった。
肩から腰に絡みつくように煙るは、長い闇色の髪。
凜と見上げるは、何とも形容しがたい不思議な色を映す二つの瞳。
女神マーテルにも、嫉妬を覚えさせるほど、顔を物憂げに歪め、静かに唇を結んでいるその様子は。
視線を、注意を、心をも、
――一瞬にして、奪った。
それくらいに、あまりにも、尋常じゃないほど、
、、、、、、、、、、、
暴力的なまで、に美しい。
エミル・キャスタニエ
「――君、は……」
五河士道
「――君の、名前は?」
呆然と。エミルと士道は声を発していた。
そして少女が、ゆっくりと二人に視線を下ろしてくる。
少女
「……名、か」
心地のいい調べの声音が、空気を震わせた。
少女
「――そんなものは、ない。」
どこか悲しげに、少女は言った。
五河士道
「―――っ」
エミル・キャスタニエ
「……名前が、無いの?」
その時、エミルと士道に目が交わり――エミルと士道の物語は、始まった。
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