7: ◆Rin.ODRFYM[saga]
2017/08/10(木) 00:05:14.42 ID:c5e7bYk30
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もう一度男の人にお礼を言いその場を後にするべく、くるりと回れ右をしたとき、不意に声をかけられた。
声の主はもちろんさっきのスーツの男の人だ。
「あの、私こういう者なのですが……」
男は、いそいそと鞄の中身をひっくり返して名刺ケースを取り出し、その中の一枚を私に差し出した。
ハナコのリードを右手に持っているため、不作法であると知りつつも名刺を片手で受け取り、それに目を落とすと『シンデレラプロダクション』という文字が真っ先に飛び込んでくる。
男が芸能プロダクションの人間であることは理解した。
「その、私に何か……?」
「ごめんなさい。急に名刺だけ渡されても困りますよね」
言って、ひっくり返した鞄の中身を詰め直しながら男はぺこぺこしている。
そうして、ようやく身支度が整ったかと思えば、男はまるで一世一代のプロポーズでもするかのように声を張り上げてこう言った。
「アイドルに、なっていただけませんか」
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