205:名無しNIPPER
2017/09/21(木) 13:33:04.93 ID:yoGsi3kr0
司令室に帰ると時刻は既に二十一時五分前となっていた。
三階に昇るとき、二階の奥の部屋を見たが、五月雨や妹はいなかった。
何事もなく、もう部屋に入ったのだろうか。それとも、まだなのだろうか。
帰って早速、私は柱島人事部の海城に今日の事を打電することにした。
内容は勿論、轟沈した五月雨少佐の妹と思われる土佐沖ノ島泊地の涼風少尉が、うちの五月雨を五月雨少佐と誤認して呼び止めようとしたことだ。
報告を終えて、少しすると電話がかかってきた。海城からであった。
海城は詳しく今日の事を聞かせて欲しいと言ってきたので、誤認された経緯を彼に伝えた。
「なるほど状況を理解しました。はい。伝えるのが遅くなりましたが、土佐沖ノ島泊地の涼風少尉は、まさに轟沈した五月雨少佐の実の妹です。やはり、まだ彼女は姉が轟沈したことを受け入れられないのでしょう……」
「はい。あの時を振り返ると、彼女の無邪気な言動に心が締め付けられます……」
「そして、辛い事をフラッシュバックさせないためにも五月雨中尉がそれを瞬時に察知し、彼女と距離を置こうとしたのは正しい判断ですし、凄いと思いました。ただ――」
海城はそこで一旦言葉を切った。何か引っかかることでもあるのだろうか。
「……代償捕獲病というのは聞いたことがないですし、よく判断できたなと思います」
「聞いたことがない?」
「ええ。ただ、代償捕獲病ではないですが、涼風少尉は事件後にPTSDになったので、艦娘の間ではこれをそう言っているのかもしれません。実際に親しい艦娘を亡くすと防衛機制の代償行動として、似たような艦娘に接近して気を紛らわすというのは良く聞きますし」
「なるほど。あと、五月雨いわくその涼風は目が病んでいるから判断できたと言ってました。私にはそうは見えなかったですが、艦娘の中ではそう言うのが分かるのかもしれません」
「目が病んでいる……ですか。目は口ほどに物を言うといいますが、そうなのかもしれません。と、お休み前に少し長く喋ってしまいましたね。五神島司令、今日も報告ありがとうございました。引き続き、気になる事があれば連絡ください。因みに指輪を発見したあとに、泊地内から何か出てきたりしませんでしたか?」
「いえ、特に何も出てきてないですよ。まぁ、また何かあれば連絡します」
そう言い、私は受話器を置いた。時刻は二十一時三十三分であった。
二十分ほど話していたが、その間は特に何もなかった。
もう、こんな時間だ。おそらく今頃は妹も五月雨も仲良く部屋に入って談笑しているところだろう。
私も今日は疲れたしもう寝ることにするか。
私は座った状態で、手を両手に挙げて伸びをすると、大きく欠伸した。
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