9: ◆ULqTtBUL.k[saga]
2017/07/23(日) 02:32:44.12 ID:jWGgUzWko
「というか、まだ返事をしてないのか俺は……」
一週間、仕事だけに集中して逃げ続けた結果がこれだ。
いっそこのままなかったことにしてしまおうか。
自分の職務に忠実であるならそれが望ましいはずなのに、彼女の曇った顔を想像するだけで胸が締め付けられた。
時刻は夜中の三時。
自分が変な気を起こす前にリビングのソファーに退避しよう。
そう思い、おそるおそる立ち上がる。床の軋む音がいつもより耳につく。
部屋を出る前にもう一度だけ、楓さんを見た。
寝ている様はさながら眠り姫のようだ。実際はシンデレラだけれど。
目元にかかっていた前髪を分ける。
そういえば、こんなまじまじと寝顔を見るのは初めてじゃないだろうか。
たとえ意識がなくとも、その端正な容姿に変わりはない。
髪が隠していた目元が現れる。
閉じられた瞼。その奥。
今は見えない、左右で色の違う瞳を宝石みたいだと思ったのはいつだっただろうか。
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