ことり「前略 木漏れ日の貴女へ」
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52:名無しNIPPER[saga]
2017/07/21(金) 19:36:23.40 ID:+NyjqKO10


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8月の末、1通の封筒が届いた。

日本から来たその封筒には、海未の名前が書かれていた。

目を覚ましたのか。そう思って、心臓が跳ねた。

封筒は白地にファンシーな飾りがついたものだった。違和感を抱いた。

すぐに引きこもっていたことりのことを思い出した。

あの日から、ことりは自分のことを海未だと思い込んでいた。

しばらくの間、いくつかの週刊誌が事件を執拗に追いかけていて、病院には連れていけなかった。

結局ことりはそのまま家に引きこもり、3年が経った。


それでも、もしかしたらと手紙を読んだ。

書いたのがことりだということには、すぐ気がついた。


絵里「だって貴女、向かいの家の玄関について書いていたでしょう?」

絵里「海未の家は塀に囲まれているわ。あの娘の部屋からは、向かいの家の玄関なんて見えない」


「……ちがいます、ちがいます、えり」



手紙に書かれた文章は、海未そのものだった。

3年の間にことりはすっかり海未になりきってしまったのだと思った。

同時に、なぜ今頃になって手紙を書くのかと首を傾げた。


ことりは、真実が知りたいのだと書いていた。

倒れた海未の横で狂ったように泣いていたあの時から、一瞬たりとも手放さなかった栞のことを気にしていた。



絵里「最後の機会だと思ったわ。この手紙は、ことりからのSOSなんじゃないかって」

絵里「今を逃せば、次はない。ことりは本当に『海未』になってしまう。そう思ったから日本に来たの」




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