273: ◆vfNQkIbfW2[saga]
2017/07/30(日) 23:25:05.04 ID:WCdpGmPz0
拙者は夕餉の後、庭で弁慶殿に槍術の稽古をつけてもらった。佩いているのは刀だが、槍術の立ち回りは剣術と似通ったものがあり、敵の虚を突き連撃を加える技まで習得できたのでござる。今の拙者がいるのは、父上と弁慶殿のしごきがあったからと申しても過言ではない。部屋に戻ったのは深更、宙天にぶらさがった月が最も明るく輝く時。手燭に火を灯し、帳台の中で眠る霊長の殺戮者へと近寄ったのでござる。
底野「おや、まだ寝ていなかったのか」
霊長の殺戮者「ひゃ! お化け……じゃなくて、おにいちゃん? 怖かったよぉ……」
底野「一人にさせて済まなかった。それはそうと、弁太郎の奴はどこへ行ったのだ」
霊長の殺戮者「新鮮な夜の空気を吸いに行くだとかなんとか、私を置いて外に出ちゃったんだ」
底野「はっ。相も変わらず霧のような男よ」
霊長の殺戮者「……ありがとう」
底野「どうした、いきなり」
霊長の殺戮者「あの日、人柱に選ばれた日、私の命運は尽きたはずだったの。でも、おにいちゃんが救い上げてくれた」
底野「礼なら弁太郎に言え。あやつがいなければ、拙者達は今頃どうなっていたか。拙者もお主も同じ、社会から弾かれた身なのだ」
霊長の殺戮者「大好きよ、おにいちゃん」
底野「うむ、拙者もだ」
霊長の殺戮者「私が大人になったら、きっとお嫁に貰ってくれるよね?」
底野「ははは、少しの間に随分とませおって。いいとも、約束だ。だから早く寝るのだぞ。嫌いな食べ物も残さず食べること」
霊長の殺戮者「うん」
拙者は霊長の殺戮者と指切りげんまんをした。
のそり、のそりと障子の向こう側で何かが蠢いていることも分からずに。
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