5: ◆nIlbTpWdJI[saga]
2017/07/17(月) 21:55:33.40 ID:b3owXeO0o
また、何度か浮きは魚が来たぞと震えたりもしたが、俺たちは釣り上げることができなかった。
そのたびに水筒の麦茶が減っていく。
水筒がだいぶ軽くなってきたところで、とうとう浮きはぴくりとも動かなくなった。
待つ楽しみ、焦りは禁物。俺は自分自身に辛抱強く言い聞かせた。
「……やっぱり釣れないなぁ……」
だが、おしゃべりな口は勝手に不満を垂らしていた。
はっ、と口を抑えて申し訳ないとライラさんのほうを向く。
金色の髪は潮風に揺らされ、青い瞳は浮きにくぎ付けのままだ。
どうやら聞こえてなかったらしい。口元の手をゆるやかに戻して、また海に視線を戻した。
視線は波に揺れる浮きから波へと移り、そのまま水平線へ流されていった。
ぼんやりと空と海の境目を眺める。
潮風の通り抜ける足音だけが耳元で響いていた。
13Res/9.17 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20