86: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:43:53.21 ID:U37eLnDj0
その言葉で、ぱっと頭に思い浮かぶのはお兄さんの顔。
……恋、恋かぁ。
こればっかりは、正直なところわからない。今までは、弟達の世話ばっかでそんな余裕なかったし。
わからないけれど、でも、そういうのとはなんとなく違う……気がする。別にこう、胸が苦しくなったりしないし。
ただあの時のお兄さんの言葉が、なんとなく残っている気がしたのは、事実で。
87: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:44:22.62 ID:U37eLnDj0
はて、どこだろう。
いつも行くところといえば、海、バイト先の数店舗、短大、たまに江ノ島……それくらいだけど。
「海ってさ、どうせいつもウィンドサーフィンばっかりでしょ?」
88: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:45:20.42 ID:U37eLnDj0
「それにほら、今の時期なら、そろそろ紫陽花もいいじゃない?」
「あー。そういえば、鎌倉って紫陽花が有名なんだっけ」
89: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:46:25.35 ID:U37eLnDj0
●
慶とそんな会話を交わしてから、2日後の休日。
本当だったらバイトが入っていたのだけれど、向うの都合で急に無くなってしまった。
ぽっかり空いてしまった休日。本当なら、課題でも進めるのがいいのかもしれないけれど、なんだかそんな気分にもなれなかった。
90: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:46:53.26 ID:U37eLnDj0
そんなことを思わずぼやいてしまうくらいには、割と困っていた。
こっちは住んでるところから大分離れてるし、普段来ないし、道もよくわからない。
ていうかウチ、こんなに地図を読めないんだってことが割とショックかもしれない……。
「慶から教えてもらったお寺、近い筈なんだけどなぁ……」
91: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:47:23.81 ID:U37eLnDj0
手帳型ケースをパチンと閉じて、バッグに仕舞う。
確かに迷ったのは不覚だけれど、まぁこれも、散歩やサイクリングの醍醐味ってヤツかもしれない。
そもそも今日は気分転換なわけだし、こういうのもまた一興、ってね!
そんな風に決めて、ウチは自転車から降りて、手で押しながら歩く。
さっきまでは漕いでいたから風が気持ちよかったけれど、これはこれで日差しが気持ちいいし、街並みが見られるのも楽しい。
92: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:47:57.21 ID:U37eLnDj0
「おお……!」
見えてきたのは、江ノ電の線路と、線路脇に咲く紫陽花、そしてこじんまりとした神社だった。
丁度江ノ電が通って行き、紫陽花を揺らす。紫色の鮮やかな紫陽花が、緑色の車体によく映える。
電車と紫陽花、それに神社……普通ならまじりあわない要素かもしれないけれど、この場所では不思議とピッタリだった。
93: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:48:34.01 ID:U37eLnDj0
「……うん、やっぱり、路に迷ってよかったかも」
目を瞑って、涼やかな風を浴びる。
木の葉が揺れて、偶に日差しが当たるけれど、それすらも気持ちいい。
そんな風に、ウィンドサーフィンとは全く違う形で自然を楽しんでいたら……。
94: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:50:41.33 ID:U37eLnDj0
●
「……ん」
一際強い風に吹かれて目を開けてみれば、影の位置が変わっていた。どうやら、けっこう寝ちゃっていたらしい。
95: ◆OVwHF4NJCE[saga]
2017/09/29(金) 19:51:14.39 ID:U37eLnDj0
「下見の最後はここ?」
「そう、この神社。ほら、あっちに鳥居と線路、紫陽花があるじゃん?」
「あー。そっか、今回は『鎌倉あじさい巡り』だもんね」
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