善子「──不幸な誕生日。」
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15: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/07/13(木) 03:12:51.28 ID:OVRkGwzJo

善子「……ずら丸はずら丸なりに……誕生日にお祝いしたかっただけなんでしょ。わかってるわよ。」

花丸「うん……でも、千歌ちゃんを見てたらね。マル意固地になって大事なこと忘れてたなって……」

善子「大事なこと?」

花丸「……マルね、歌を披露することで頭がいっぱいだったんだと思う……だから、善子ちゃんに喜んで欲しいんだってこと忘れてたんだって……」

善子「……それは違うわよ」

花丸「……え?」

善子「あんたが人前で率先して誰かのために歌おうなんて、言い出すこと自体がそもそも珍しいじゃない。それくらい……私のために決心して、披露しようしてくれてたんでしょ?」

花丸「……そ、そうなのかな……よく覚えてないけど……」

善子「だから、ホントはその気持ちだけで十分だったのよ。」

花丸「善子ちゃん……」

善子「どっかのみかん娘はそんなの全部ふっとばしちゃうくらいめちゃくちゃなだけよ。ずら丸が気後れするようなことじゃないわ。」

花丸「うん……ありがと、善子ちゃん」

善子「……どういたしまして。あとヨハネね。」


廊下の窓の外から、外を見ると酷い嵐になっていた。


善子「全く……ホントに何かあったらどうする気だったのよ……」

花丸「あはは……ダイヤさんとか真っ青だったよ。レスキュー呼ぶかって大騒ぎで……」

善子「Aqoursにいると騒がしいわね。風の音とか気にならないくらい。」

花丸「そうだね。……あ、そういえば風の音で思い出したけど。」

善子「……なに?」

花丸「……千歌ちゃんがね、嵐が来るってわかってるなら、皆で集まって晴れるまで家で遊べばいいって。風の音が五月蝿いなら、そんな音掻き消しちゃうくらいおっきな声で皆で騒げばいいんだって。」

善子「……ま、これからそうするってことでしょ?」

花丸「うん。そうだね。」

善子「……ヘクチ!」

花丸「その前にお風呂……だね」

善子「……そうね」

花丸「きっと明日は善子ちゃんの誕生日だから、学校に行けそうにないから、朝まで騒げるね」

善子「全く……人の誕生日をなんだと思ってるのよ……」

花丸「ふふふ」


──7月13日は私、津島善子の誕生日。

毎年不幸に見舞われて、今年も嵐に見舞われて過ごすことになるみたい。

でも、そんな不幸もまるまる飲み込んで楽しいイベントにしようとする愉快な仲間に囲まれて。

どうやら、今年もまた一歩、真の堕天使に近付く道から遠ざかってしまいそうだ。

まあ、今年くらいはいいかな。

そう思った。

今宵の時計が天辺を回る時間。

生まれて初めて、心の底から自分の誕生日が来るのを楽しみにしている、自分を感じて。


善子「今年はどんなアクシデントが起こるのかな?」


なんて、笑いながら、呟いた。

さぁ、パーティの始まりだ──

<終>


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