善子「──不幸な誕生日。」
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10: ◆tdNJrUZxQg[saga]
2017/07/13(木) 03:10:36.71 ID:OVRkGwzJo

善子「……」


沼津行きのバスの中、他の乗客は乗っていなくて、曜と二人っきり。


曜「ねえ、善子ちゃん」

善子「何よ」

曜「どうして、そんなにパーティするの……嫌だったの?」

善子「……」

曜「花丸ちゃん、あんまり口にはしてなかったけど、結構気にしてたよ」

善子「……。……幼稚園のときね」

曜「うん」

善子「ずら丸が聖歌隊で練習した歌を披露してあげるって、約束してくれたの。……でも、当日は大荒れの台風日和で、もちろんその日は幼稚園もお休みで」

曜「……」

善子「もちろん台風が明けてから、お祝いはしてもらえたんだけど……」

曜「……けど?」

善子「ずら丸……歌ってくれなかったのよ」

曜「……え?」

善子「『オラは善子ちゃんの誕生日に歌うって約束したの』って、泣きながら先生にずっと言い続けてた。バカよね、こういうときはホント素直というか頑固というか、昔から生真面目なのよ。」

曜「……」

善子「……私は、私を祝おうとしてくれてる人を泣かせてるんだって……子供ながらに悲しくなった」

曜「だから……」

善子「……それだけが原因じゃないけどね。女子ならなんとなくわかるでしょ?大体どんな場所でもお互いに誕生日のお祝いするのって……でも、ニアミスで会えなかったり、サプライズを前日に知っちゃったりとか。別に自分が祝われないのはいいの、慣れてるから……でも──」


脳裏に……焼き付けられた情景を思い返しながら


善子「本当に……申し訳なさそうにしてる、私を祝福してくれようとしていた人たちの顔を見るのが……辛いのよ……」


誕生日に友達のお祝いをするなんて、些細なことだ。

でも、だからこそ……些細だからこそ、不注意で刺さってしまった小さななトゲのように消えてくれない。

チクチクと心が痛み続ける。

いつまでも脳裏に木霊する。ごめんね。ごめんね。ごめんね。ごめんね──って


善子「ねぇ……曜」

曜「……ん」

善子「これ聞いても……この任務全うする?」

曜「……するかな」

善子「……千歌のため?」

曜「うぅん、善子ちゃんのため……かな」

善子「……皆優しいのね……嫌になるくらい」

曜「善子ちゃんが優しいからだよ」

善子「私が優しいのが原因なら、もっと悪い子にならないといけないじゃない」



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