2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:46:45.78 ID:WMIgWMbh0
防音加工のなされたレッスンルーム。その室内に佇んでいる大きな黒い姿。
力強い存在感を持つそれに静かに歩み寄った。ホコリよけの布を外し、カバーを上げる。規則正しく並ぶのはツヤのある白と黒の鍵盤。
鍵を押し込むと、対応するハンマーが弦を叩いて音を奏でる。打楽器でもあり、弦楽器でもある。打弦楽器という珍しい分類に組み込まれるピアノ。
3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:47:44.56 ID:WMIgWMbh0
*Forte(フォルテ)【強く】
4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:48:52.79 ID:WMIgWMbh0
「志望動機は目立ちたいから。だから、アイドルにこだわりがあるか、って言われると……そうでもないわね」
「えらく正直ですね。……モデルはダメでも、アイドルにならなれると思いましたか?」
5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:49:49.52 ID:WMIgWMbh0
*Crescendo(クレッシェンド)【だんだん強く】
6:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:50:42.12 ID:WMIgWMbh0
夕暮れ前にルームの使用許可を取ったというのに、自分なりの満足が得られる頃には既に日は沈みきり、窓の外にはとっぷりと夜の帳が下りていた。
軽くクールダウンしてから室外への扉を押し開けると、コツンという何かがぶつかる音。
7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:51:44.64 ID:WMIgWMbh0
*Mezzo Piano(メゾ ピアノ)【少し弱く】
8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:52:39.28 ID:WMIgWMbh0
あまりに痛烈で、どうしようもなく的確だった。
思い出すたびに悶えるぐらい恥ずかしく感じる。
その時の私を、プロ意識がゆえの言動だったんだ、なんて良いようには到底言えない。
9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:53:19.33 ID:WMIgWMbh0
*Non troppo Lento(ノン・トロッポ・レント)
【遅く、しかし遅過ぎないように】
10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:54:10.56 ID:WMIgWMbh0
プロデューサーは、私が失敗したらきちんと叱るし、成功したら自分のことのように喜ぶ。
他人との関係が希薄化しつつある、なんて言われがちなこの時代に真っ向から逆走しているような人だ。
初めてのミニライブを成功で終えた時なんて、ステージ裏に戻った私を涙ぐんだ目で迎えてくれたよね。
11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:55:29.02 ID:WMIgWMbh0
*Animato(アニマート)【生き生きと】
12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/07/01(土) 21:56:54.70 ID:WMIgWMbh0
事務所の方針として恋愛が禁止というわけではないが、やはりアイドルたるもの男の影には気をつけなければいけない。
その心遣いは確かに大事だしありがたい、けど。
「ジャケットぐらい脱いでも大丈夫じゃない? シャツとネクタイだけでも仕事関係だってわかるわよ」
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