【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
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◆Z5wk4/jklI
[saga]
2017/07/28(金) 23:20:30.35 ID:23vyEUVD0
「プロデューサー! 大丈夫でしたか!?」
声のする方を仰ぎ見る。あの日は夕日で逆光だった。今は昼前、太陽が反対側の位置だ。茜の顔がよく見える。
「はー……ああ、大丈夫だ。ケガもしてない」
「スーツ、汚れませんでしたか!」
茜は土手を降りて、俺のところまで走ってくると、膝をついて、寝転がる俺の顔を覗き込んだ。
「ああ、濡れてもいない。それに、どうせこの前適当にスーツケースにしまってシワだらけだし、そろそろ――」
そこまで言うと、茜ははっとした顔をした。
「……クリーニングに出そうと思っていた、ですか?」
「ああ、その通りだ。……ははっ」
俺は笑う。それでようやく、茜も微笑んだ。
「懐かしいですね」
「俺もそう思う。でも、たった数か月前のことなんだよ。すごくいろんなことがあったな。茜がアイドルになって、皆でいろんな仕事して……濃かったよな、この数か月」
「はい」
「……楽しかった」
「……はい」
茜は穏やかに肯定する。
「……茜たちに、言ってなかったことがあるんだ」俺は茜を見た。茜は不思議そうにしている。「俺、茜たちのプロデューサーやるって言っといて、ずっと自分から逃げてたんだよ。幼なじみとの小さいころの約束が果たせなくてさ。幼なじみとはもう会えなくなって、それがトラウマになった。ずっと適当に、自分から逃げたまま生きてた。お前たちのプロデュースも、最後に先輩に任せて逃げようとしてたんだ。怖かったんだよな、昔に俺自身がした喪失を繰り返すのが」
「そんな、プロデューサーは私たちをすごくサポートしてくれています!」
「そう思うか? でも実際は、実家に逃げ帰って、結果、茜にも辛い思いさせてさ。茜はみんなに合わせる顔がないって言ってたけど、俺のほうがずっとダメだったんだよ。みんなに本当の顔を見せずに仕事してたんだからな。でも……実家に引きこもってたら、こいつに、再会した」
俺は胸のポケットから、さいきっく・わらしべ人形を取り出す。茜があっと驚きの声をあげた。
「これ、ユッコちゃんの!」
「信じられないよな。お袋がもらってきた。そのとき思ったんだよ。最後までお前たちのプロデュースをしたいって。実家に帰って、こんな奇跡に出会うまでそんな自分の気持ちにすら向き合えなかったんだからな。笑えるよ、自分の弱さに」
俺は茜にさいきっく・わらしべ人形を握らせる。
「俺もみんなにも、茜にも合わせる顔はないけど、頑張るよ。失敗した分はこれから取り返す。茜はどうだ、アイドル、続けたいか?」
「私……」
茜はさいきっく・わらしべ人形を握り締めて、涙を流した。
熱い雫が俺の顔にかかる。
茜はふうう、と震えた熱い息を吐いて、それから目を見開く。
「私、アイドル、やりたいです! みんなといっしょに! 沢山迷惑をかけてしまいました! でも、やっぱりみんなと一緒にやりたいんです、こんどこそ、元気な私で、最後まで!」
俺は目を閉じて、茜の言葉を心に刻んだ。
「ああ。それで十分だと思う」俺は体を起こして、茜の前に立つ。「みんなに申し訳ないと思った分は、二人ともこれから挽回しようぜ。辞めるのはいつでもできる。でも、辞めてしまったら、取り戻したいものも二度と取り戻せないんだ」
言って、俺はポケットから名刺入れを取り出し、茜に名刺を差し出す。
「日野茜さん。貴女を、スカウトします。アイドル、やりましょう」
俺が差し出した名刺を、茜は目に涙を溜めて、けれども、晴れやかな笑顔で受け取った。
「はいっ!」
河川敷に、茜の大きな声が響いた。
第十一話『君といた未来のために』
・・・END
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