【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
1- 20
64: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/07/28(金) 23:05:07.42 ID:23vyEUVD0
 お袋が目のまえに差し出してきたものを見て、俺は間抜けな声を漏らした。
 自分の顔が頬杖から零れかける。

「は……はは……」

 俺の口から笑いが漏れた。
 まさか、こんなことがあるなんて、いったい誰が想像するだろうか?

「ほらこれ、悩みを解決してくれるお人形なんですって」

 お袋は得意げに言う。
 俺の目のまえに差し出されたものは、曇ったような銀色の先割れスプーン。
 スプーンの先と柄の間の部分に、てるてる坊主のように端のほつれたハンカチが巻かれ、ハンカチが外れないよう、細い紐で縛って固定してある。

「名前も聞いたんだけど……なんていったかしら……そう、タイの……ワラ人形?」

「……さいきっく・わらしべ人形……」

 俺の声は震えた。

「そう、たしかそんな名前ね!」お袋は空いている方の手のひらで腰を打つ。「あんた知ってるの? 都会で流行ってるのかしら。困ってる人の悩みが解決したら、つぎの誰かに渡すんですって。あたしの悩みは解決したから、それ、あんたにあげるわ」

 差し出された人形を、俺は受け取る。
 手が震えた。
 間違いなかった。

 スプーンの先に油性ペンで書かれた顔はほとんど剥げ落ち、結んでいた紐は別のものに代わっている。
 だけれどそれは間違いなく、あの日、ショッピングモールで茜と堀裕子、それと迷子の子供が一緒に念を送り、迷子の子供の手に渡った、裕子のスプーンで作られた人形だった。

「ははははは……」

 俺は人形を握り締めて、もう片方の手で腹を抱えて笑い続けた。
 ここまでくれば、誰も追いかけて来れないだろうと思っていた。
 距離を離せば、嫌でも縁は切れてしまうだろうと。
 それがどうだ。縁は切れないどころか、こんなところまで追いかけてきた。
 時に信じられないような奇跡だって起こしてみせる。それが、アイドル。

「はー……」ひとしきり笑い終えて、俺は立ち上がる。「ありがとう、お袋」

 ありがとう、茜。裕子。迷子の子ども。そして人形をここまで継ぎ続けた、心優しき人達。

「俺さ、帰るわ」

「……え、今からかい?」

 お袋は目を丸くする。俺は頷いた。

「ああ、親父によろしく」俺は居間に戻り、自分の荷物が入ったリュックサックのジッパーを開くと、乱暴に放り込んでいたスーツを引っ張り出す。「大事な仕事が、あるんだ」

「……そう」お袋は、俺の背に穏やかに声をかける。「がんばんなさいよ」



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
93Res/154.25 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice