【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
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37: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/07/15(土) 00:26:39.98 ID:JPdS/Cks0
「ほたるちゃん、このまえのラジオのとき、手を握ってくれてありがとう。私、あのとき、ほんとうにうれしかったよ。だから、お返ししたいと思ってたんだ」

 屋上の扉の前に二人は立つ。その後ろに俺たちが追い付いていた。

「つぎは、ほたるちゃんの番」

 裕美は屋上ビアガーデンの扉を開ける。
 扉の向こうは暴風雨だった。
 椅子は風で飛ばないように片付けられ、固定されたテーブルだけが残っている。当然、人の姿はない。

「裕美ちゃん、やっぱり……」

 ほたるは荒れ狂う空を見て言う。唇は震えている。
 しかし、裕美は首を横に振った。それから、睨むように空を見る。

「ほたるちゃん、ちょっとだけ、無茶かもしれない。でも、きっと今なんだよ。私たちがついてるから、あとはほたるちゃんが勇気を出して」

 裕美はほたるから手を離し、一歩前に出る。強い雨と風が容赦なく裕美に襲い掛かった。

「裕美ちゃん」

 心配そうに裕美を呼んだほたるの横を、茜、比奈、春菜が通り過ぎて、裕美と同じくほたるの前に出た。

「ほたるちゃん!」雨の中で茜が笑う。「勇気があれば、大丈夫です!」

「勇気……」

 ほたるは小さくつぶやく。
 それから、目をぎゅっと閉じ、肩をすぼめて、なにかをじっと考えているようだった。
 茜たち四人は雨でずぶぬれになっている。
 やがて、ほたるは目をあけると、そっと一歩、茜たちのほうに歩み出す。

「ほたるちゃん!」

 春菜が嬉しそうに言った。

「さあ! ステージへ行きましょう!」

 茜が言うと、春菜、茜、ほたる、裕美、比奈の順に横一列になり、手を繋いで行進するように、誰もいないビアガーデンを五人で闊歩していった。
 恫喝するかのように、雷雲が轟音を響かせる。
 それでも五人は止まらない。

 五人はステージの上に立つ。
 俺はそれを、ビアガーデンへと出る扉のところから見ていた。
 ほたるを除く四人は、凛とした表情でステージから無人のビアガーデンを見据える。
 ほたるだけが、まだ不安そうにしていた。

 空は真っ黒い雲がぐねぐねとうごめいている。
 強風が吹いて、横殴りの雨が五人を責めた。

「ほたるちゃん! 勇気をだしてください!」茜が叫ぶ。「五人で、一緒にやりましょう! 不幸なんて、みんなで吹き飛ばすんです!」

 ほたるは悲痛な顔をしていた。頬を流れていく水滴は雨のようにも、涙のようにも見えた。

「大丈夫っスよ、ほたるちゃん。きっとアタシだって、ほたるちゃんに迷惑かけてることがあるし、これからもかけちゃうこと、あるっス。お互い様っスよ」

 比奈が歯を見せて笑った。

「そう、だから!」春菜は眼鏡についた雨粒を拭うこともせず、叫ぶ。「ほたるちゃんの声を、聴かせてください!」

「ほたるちゃん、私のつぎは、ほたるちゃんの番だよ! 聴かせて、ほたるちゃんの声、ほたるちゃんの、ほんとうの気持ち!」

 裕美が言う。
 ほたるは、大きく息を吸って、吐き、目を閉じて頭を垂れる。
 祈っているみたいだと、俺は思った。
 そのまま、十秒ほど。
 それから、ほたるが顔をあげた。


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