【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
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3: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/06/30(金) 23:17:09.43 ID:DzD82Pjh0
「お豆腐と、しらたき……長ネギはあるって言ってたわね……」

 道中のスーパーマーケット、早苗はスマートフォンの画面に表示したメモを見ながら、比奈の押すカートの買い物カゴに次々に食材を放り込んでいく。

「お肉、何グラムくらいいるかしら……うーん……よし、アイドルらしく思い切って少なめにして、そのぶんちょっといいおつまみ買うわ!」

 早苗はそう言ってすき焼き用牛肉のパックを買い物カゴに放り込んだ。

「アイドルらしくお肉少なめにしたのに、おつまみ増しちゃったら意味ないんじゃないスかね……」

「いいのいいの、細かいことは言いっこなしよ! あ、こっち二割引じゃない! こっちにするわ」

 早苗は割引シールのついたパックと、買い物カゴの中のパックを交換した。
 比奈は乱雑に放り込まれたカゴの中の食材を並べなおしながら、早苗の買い物をじっと見ていた。

 比奈自身もアイドルとして活動することによって、当然ながら、世の中のアイドルにもオフのときがあると自分の身をもって知った。
 それでも、ステージの上ではあんなに輝いているアイドルが、いま目の前でスーパーマーケットの買い物に悩んでいるギャップには新鮮な違和感があった。
 一方の早苗はそんな比奈の心境を知る由もなく、チーズの棚の前でどれを買おうか悩んでいる。

「よーし、つぎはドリンクねー!」

 やや高級志向のカマンベールチーズを買い物カゴに加えて、早苗は意気込んでアルコール飲料のコーナーへと闊歩していく。と。

「あ、重くない?」早苗は比奈のほうを振り返った。「あたし、カート押そうか?」

「大丈夫っス」

 比奈は首を振った。

「そう? あたし、こう見えて元警官で黒帯も持ってるのよ。年上とか芸歴とかで遠慮しないでね?」

「……了解っス」

 比奈は早苗の元警官という肩書に驚きを隠せなかったが、いまはそれ以上尋ねないことにした。

「よーし、じゃんじゃん行くわよー!」

 アルコール飲料コーナーにたどり着いた早苗は、カートの買い物カゴにつぎつぎ缶ビールのパッケージを入れていく。

「ちょっ、ちょっとちょっと早苗さん!」

 あわてて比奈が早苗に声をかけると、早苗は動きを止め、きょとんとした顔で比奈を見た。

「なに?」

「ちょっと、入れすぎじゃないっスか?」

「そう? いっつもこのくらいよ?」

「いっつもって……」

 比奈は詰みこまれたビールの本数を数える。
 五百ミリリットルのロング缶の六本のパッケージがカゴに二つ。さらに早苗の右手に一つ。

「でも、これ以上は確かに重たくて大変よね。このくらいにしておきましょうか」

 早苗はその手のパッケージもカゴの中に入れると、にっこりと微笑んだ。
 比奈はなにも言わずに、ずっしりと重くなったカートを押した。



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