【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
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22: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/07/07(金) 21:06:47.60 ID:XFMgPNzd0
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 曲がはじまり、六人はマイクを切る。

「みんな、ありがとう」最初に口を開いたのは裕美だった。「私、ほんとにみんなに助けられてるね。唯さんも。……もっと笑顔、がんばらなきゃ」

「ゆいは楽しくおしゃべりしてるだけだよー、裕美ちゃんも、せっかくだし楽しんでっちゃって!」

 唯は裕美に向かって投げキッスする。それで、裕美の表情が和らいだ。

「裕美ちゃん」

 比奈は自分の手元の資料を裕美に示す。
 そこにはいつのまにか、裕美の似顔絵が描かれていた。
 しかめっ面の裕美と、笑顔の裕美。
 デフォルメされた自分の姿を、裕美は見つめる。

「私、こんな顔してた? ……やっぱり、笑顔のほうがいいよね」

 弱々しく笑う裕美に、比奈は穏やかな表情で首を横に振る。

「笑顔になろうと無理をすることはないと思うっスよ。どっちも裕美ちゃんで、どっちも魅力的っス。それに、漫画やアニメでも、ずっと笑顔だけのキャラって、かえってブキミなもんっスよ」

 言いながら、比奈は持っていたペンで裕美の手をなぞる。
 ペンにはキャップが着いたままなので、なにを書いたのかまでは、俺からは遠くてわからない。

「そうですっ!」茜が身を乗り出すようにして続く。「アイドルだっていっつも笑顔だけじゃあじゃないはずです、悲しいときも嬉しいときもあって、自然な裕美ちゃんがいちばんですよ!」

「お芝居のレッスンしているときの裕美ちゃん、いっつも表情豊かで、すごいなって思ってます」

 ほたるは言いながら、小首をかしげて微笑んだ。

「いろんな、表情……そっか、私、無理して笑顔でいようって思ってたんだ……哀しいときも嬉しいときも、自然に。楽しいときに笑うのも、私のままでいいんだよね」

 裕美はほたるの目を見つめて言い、頷いた。
 ほたるは裕美がもう大丈夫だと思ったのだろう、裕美の手に添えていた自分の手をそっと離す。
 裕美は姿勢を正して、目の前を穏やかな顔で見つめて、ふっと微笑んだ。

「曲あけます、準備してください」

 PAの合図がかかる。六人はお互いに頷き合うと、カフボックスのレバーに手をかけた。
 唯が裕美を見つめる。

「もしまだだったら、ゆいがつなぐよ?」

 裕美は唯を見つめ返す。

「ううん、大丈夫」

 裕美は言う。自然な笑顔だった。
 曲がフェードアウトしていく。六人はマイクを入れた。

「ああーっ、ここでおしまいでしたか……」唯より早く、春菜が残念そうに言う。「この曲、一番最後まで聴くと、歌詞に眼鏡って出てくるんですよ! みなさん、ぜひ聞いてくださいね!」

「あはは、ってことで、眼鏡ちょーラブな春菜ちゃんのアゲ曲でっしたー! 続きましては、裕美ちゃん! なんだけどー、そのまえに、ゆいぜったい裕美ちゃんに聞こって思ってたことがあったんだー! 裕美ちゃんのそのアクセ、めっちゃカワイイよね! プリティーなおでこのとこ、ヘアクリップと、首もとのネックレス! ずっと気になってたんだー!」

 おでこ、と言われ、裕美はぴくりと肩を跳ねさせた。
 裕美は窓からギャラリーをちらりと見る。俺も見た。さっきの女子学生たちはまだ、そこにいる。

 裕美はもう一度唯をへ向き直る。
 それから、自然な笑顔を見せた。

「ありがとう。これはね、私がつくったの。私、アクセサリー作りが趣味なんだ」

「えっマジ!? すっごーい! だってほら、公開収録見てるみんなは見えるよね、すっごいかわいいの! ね、もっと見せてあげてよ! ラジオで聴いてるひとはねー、ね、あとでサイトに写真、のっけていい?」

「うん、大丈夫」

 裕美は言いながら、外のギャラリーにアクセサリーが見えやすいように姿勢を整え、ギャラリーに向かって手を振った。
 照明を受けて、裕美がつけている、傘のような白と赤の花を水晶にとじこめたようなアクセサリーがきらめいた。

「どーやって作ってるの? ゆいにもできる?」

「これはね、この中心の部分はレジンで……」



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