【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」完結編
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19: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/07/07(金) 20:59:40.41 ID:XFMgPNzd0
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「……ってなわけで、今日のゲストは以上の五人のみなさんでお送りするよー。てゆーか、ウケるよねー、ユニットの名前、まだ未定なんでしょ? ゆいもユニット活動したことあるけど、フツー名前決めてから活動じゃん?」

「それはいろいろあったんですよ。ね、茜ちゃん?」

 春菜が茜に振る。

「そうですっ!」ブースの中にも関わらず茜は立ち上がり、身を乗り出す。「いろいろ! あったんです!」

 ……一秒沈黙。

「って、それ説明しないと意味ないっしょー!」唯がけらけら笑う。「ま、アイドルにヒミツはつきものだよねーってことで! ユニット名は気になるトコだけどー、じゃーさっそく、そんな茜ちゃんから行ってみよーか、じゃじゃーん!」

 効果音が入る。コーナーの合図だ。

「はいっ! ゲストのアガる曲を教えてもらって、それかけちゃお、みんなで聴いちゃおってコーナーだよー。じゃあ茜ちゃん、おしえておしえてー?」

 唯は言いながら、左手で茜の手元の資料を示してウインクする。
 資料には進行に問題がないように、あらかじめ話す予定の内容を箇条書きにしてある。

 俺はコントロールルームに置かれているモニターを見た。
 モニターにはレコード店内の様子が映されている。
 公開放送のブースには、人だかりができ始めていた。

「はいっ!」

 茜は資料を両手で持って立ち上がる。

「ちょっ、待って待ってぇ!」唯も椅子の音を響かせて立ち上がる。「茜ちゃん立たなくていいし! ゆいのラジオで初めてだよ、立ったの! それじゃ授業で朗読するヒトみたいだよ、ちょーウケるね! いいね、そのままやっちゃって!」

「はいっ! 私はよく河川敷で走り込みをしているんですけれど、そのときにいつも口ずさんでいる曲を紹介します! お笑いタレントさんの歌うすこし古い曲なんですけど、とっても前向きな詩で、すっごく元気が出るんですよ! みなさんもぜひ、聴いて元気になってください!」

「オッケー、じゃあ茜ちゃんのアガる曲、行ってみましょー、どぞー!」

 唯のキューを受けて、曲が始まる。
 曲が始まったのを確認して、唯はカフボックスのレバーをオフにした。それに全員が追従する。

「茜ちゃん、良かったよー、座って?」

「はいっ! 緊張しました!」

 茜は椅子に座ると、ほうっと息をつく。

「だいじょぶ! お客さんもだいぶウケてるよー? ほら!」唯はブースの外を示す。「茜ちゃん、手ふったげて?」

 言われた通りに、茜は笑顔でブースの外に向かって手を振った。観覧者の何人かが茜に手を振り返す。

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「順調ですね。日野さん、緊張してるって言ってましたけど、初めてでも落ち着いてるじゃないですか」

 コントロールルームの中、ディレクターが言う。

「いやあ、唯と番組の力が大きいですよ。さっき立ち上がったのだって、きっちりフォローしてもらいました……っと」

 俺は身を乗り出す。
 裕美の表情がこわばっていた。背筋も少しだけ丸まってしまっている。

 ラジオはまだ曲を流している最中だ。
 俺は裕美の緊張の原因を探り――すぐにそれにたどり着いた。

 ブースの外、レコード店内から観覧しているギャラリーのうち、制服姿の女子三人組が、ブースの中を見ながら談笑している。
 三人のうちの一人が、額を指さして仲間と盛り上がっていた。

 裕美は卓上の資料に視線を落として、ときどき、店内とを隔てる窓のほうを気にしていた。
 裕美のとなりに座っている荒木比奈が、俺のほうを見る――



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