20:1 ◆0NR3cF8wDM[saga]
2017/06/28(水) 21:59:11.95 ID:OXNr9JoL0
「いつも、このベンチで私の歌を聴いてくれていますよね?」
如月千早さん、っていうんだって。
「年下の女の子が私の歌を聴きに来てくれている、それがすごく嬉しかったんです」
憧れていた歌姫に声をかけてもらって、ごちゃごちゃだった頭の中は真っ白になっていました。
緊張で自分の名前を言うのも上手くいかないぐらい。
でも、悲しい気持ちは、小さくなったかも。
「……今日は何かあったんですか?」
恥ずかしい気持ちや、情けない気持ちもありました。
憧れの人に自分の惨めな所を見せたくない、聞かれたくない、って。
「言いたくないことなら、いいんです。でも、誰かに話すことで楽になることもあるから」
でも、それ以上に、目の前で私のことを心配して、話を聞こうとしてくれている千早さんの優しさに、我慢ができなくなって。
私は、これまで誰にも話したことのない、色々なことを話すのでした。
歌が好き。
特にみんなを元気にするアイドルの歌。
でも歌うのは嫌い。
上手に歌えないから。
でも本当は歌いたい。
私だって、みんなみたいに胸を張って大きな声で歌いたい。
歌うことは楽しいことだって。
でも現実は私に優しくないから、私は歌っちゃダメだから。
歌が好き。
……本当に?
歌えないのに。
どうして、どうして。
私は、みんなみたいに、千早さんみたいに、歌えないんだろう。
歌っちゃいけないんだろう。
私は、
歌が好きでいちゃいけないの?
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