21:1 ◆0NR3cF8wDM[saga]
2017/06/28(水) 22:03:47.44 ID:OXNr9JoL0
まとまりのない、自分でも何が言いたいのか分からない話だったと思います。
でも、千早さんは隣にいて最後まで聞いてくれました。
ただ静かに、私の悩みとも愚痴ともつかない話を受け止めてくれました。
誰にも話せなかった話を聞いてもらって、少し、気分も落ち着いたような気がします。
一度深呼吸をして、ありがとうございました、とお礼を言おうとしたところで、
「矢吹さん」
千早さんが、私をまっすぐに見つめていました。
「矢吹さんは、歌が嫌いですか?」
そんなことないです。
そんなこと……ない、はず。
「ええ。いつも私の歌を聴きに来てくれる矢吹さんが、歌が嫌いだなんて、そんなことはないと思いますよ」
そうなのかな?
「それとも、いつも嫌々に聴いてくれていましたか?」
そんなことないです!
「ありがとうございます。ふふ、じゃあ、やっぱり、矢吹さんは、歌が好きなんですよ。いつも楽しそうに聴いてくれていて、私からは、自分も歌いたいのを我慢しているように見えました」
だって、私は歌っちゃダメだから……
「そんなことない。そんなことは、ないんですよ、矢吹さん。歌は自由なものです。いつだって、誰にだって」
でも……
「歌いたいって思うなら、歌えばいいんです」
……
「上手とか、あまり上手じゃないとか、あるかもしれないけれど。大事なのは、本人が歌いたいかどうか、歌っていて楽しいかどうかだと思います」
楽しい……
私も、昔は、歌うことが楽しかった気がします。
上手とか下手とかあまり考えてなくて、ただ歌いたいから歌っていた頃。
「ねえ、矢吹さん」
はい。
「一緒に、歌ってみませんか?」
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