真姫「アイリスのはなことば」
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212:名無しNIPPER[saga sage]
2017/06/27(火) 12:31:46.71 ID:gtFhDy4Ho

そして、とある街で起こった悲惨な事件。

彼女の歳の近い学生が体をバラバラにして殺された。

この猟奇的な事件は一時的な報道で終わってしまった。


彼女は考える命の価値を。


ネット喫茶にて事件のあった地元の警察署へメールを作成する。

もう一度、あの事件を取り上げてほしいと、公表してほしいと。

そうしないとまた命が奪われることになると。

それは犯罪をほのめかすような文章だった。

警察に目を付けられる可能性を考えてネット喫茶を選んだ。

文章を書きあげて彼女は考える。

どうやってこの場を去ろうかと。

入店のときは適当な連絡先を筆跡を気を付けながら記入した。

だがお金のやりとりをする退店の時はそうはいかない。

考えあぐねているとき、事は起こった。

別の部屋で利用客同士のケンカが始まったのだ。

大声を張り上げ怒鳴りあって騒いでいる。

送信ボタンを押した彼女は少し多めの金額を支払い、
ケンカから逃げるよう振舞い、その場を後にした。


思えばそれが最初の導きだった。


高校の本だけでは彼女の知識欲は満たされなかった。
ならばと思い、本屋へとアルバイトを探した。

平均的な学力と平均的な生活をしていれば後々困ることは無いのだと思っていたからだ。

バイト先の店長は彼女の容姿を見て気に入り、採用する。
彼女はそれに気付いたが、すぐに期待外れに終わると理解していた。
自分の性格は自分がよく知っていたのだから。

そしてこれが二つ目の導きになる。


バイトから帰る途中、チンピラに絡まれた時。
彼女の人生は大きく揺さぶられることになる。


肩をゆらして歩く男に彼女は避けようとした。
だが、男は彼女にぶつかるようわざと歩いた。

彼女は謝るが男は聞かなかった。

口汚い言葉で彼女を罵る。

謝り続ける彼女の声に男は調子づいていった。


その時、彼女は思った。

この人間の命に価値はないのだと。


小さい頃から毎日欠かさずに読んでいる小説がある。
叔母が作ったご飯が冷めるほどに夢中になり
叔父が心配するほど夜が明けるまで読み続けた小説。

その物語に登場する生物の首を撥ねた剣をモチーフにしたナイフが彼女の手元にあった。

衝動買いした日から肌身離さず持ち歩いているナイフ。



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