211:名無しNIPPER[saga sage]
2017/06/27(火) 12:28:54.46 ID:gtFhDy4Ho
その日の放課後。
叔母と叔父に連れられ、繁華街を歩いているとき、担任の姿を見た。
渡した封筒を手にして歩いていた。
不思議に思った彼女は担任の行動を凝視した。
担任は自然な足取りで歩いて行き、ゴミ箱の前で止まった。
この問題を無かったことにする為、ゴミを捨てるかのように放り込んだ。
彼女は理解した。
誕生日の子には価値がないのだと。
この担任の先生にも価値がないのだと。
彼女の中に魔物が生まれた。
クラスではその事件は有耶無耶なままに忘れ去られていった。
その教師とは卒業まで目を合わすことはなかった。
卒業式の夜。
アルバムをめくっていく。
自分の写真が一枚しかないことを確認してゴミ捨て場に向かった。
小学校で過ごした時間とともに卒業アルバムを捨てた。
中学に上がるころ、叔父と叔母が田舎に帰ると伝えた。
彼女の面倒は見切れないと。
財産には手に付けていないから、それで生きて行けと。
広い家には彼女のみが住むことになった。
それが両親の遺したすべてだった。
それから1年、叔母が雇った家政婦が世話をしていたが、
ふと思い立ち、叔父に連絡する。
家を売り、お金だけが残る。
それで彼女は両親の命の価値を知った。
新しいマンションで暮らす最初の夜。
彼女は両親が死んで初めて泣いた。
それが中学2年生の冬だった。
中学卒業の夜、また同じように卒業アルバムを捨てた。
高校に入っても彼女は命の価値を考える。
それらの本を手当たり次第に読んだ。
哲学書は勿論、オカルト雑誌や犯罪に手を染めた宗教団体の本も読んだ。
それでも彼女は理解できずにいた。
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