210:名無しNIPPER[saga sage]
2017/06/27(火) 12:26:55.22 ID:gtFhDy4Ho
―― 命の価値
彼女はそれについて小さなころから考えていた。
それは物心ついたころ両親を事故で失ったころに遡る。
彼女の両親は多忙を極め、仕事先から仕事先へ向かう途中の飛行機事故でこの世を去った。
残ったのは多額の遺産
それと引き換えに彼女は親の愛を永遠に受けることがきなくなった。
親の死を知ったのは報道番組。
ニュースキャスターが悲しそうに搭乗者数を読み上げていた。
その中の数字に親二人も含まれていることはまだ知らない。
知ったのは、そのあと。
名前が文字となって表れた時。
隣で彼女の世話をしていた家政婦が絶望の色を示す。
それを見て彼女は知った。
同姓同名の他人ではなく私の両親の名前なんだと。
嘘や悪戯で誰かが私を騙しているわけではない、現実なのだと。
名前が表示されたのはそれが最初で最後だった。
それからは死亡者数としてだけ報道されていった。
彼女は考えた。
名前から数字に変わった両親の命の価値について。
それから遠い親戚の叔父と叔母が彼女の家に住むことになった。
彼女はただ潰れていく時間の中で生きていく。
そして小学4年生のとき、彼女の中に魔物が生まれることになる。
クラスメイトの一人が誕生日なのでみんなでお金を出し合ってプレゼントを買おうということになった。
彼女は根が暗かったのでそれに誘われることはなかった。
だから、チャンスだと思いその集められたお金を盗むことにした。
みんなが困れば困るほど、誕生日の子の価値が上がるのだと思っていた。
実際にはその通りだった。
学級で問題になり、保護者を集めた説明会があり、日が経つにつれ騒ぎが大きくなっていった。
彼女は知った。
その子の命にはとても価値があるのだと。
担任の先生にお金を渡しに行く。
驚いていたが、お金を受け取り、この問題は解決してみせると言ってくれた。
彼女は安心した。
287Res/369.48 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20