29:名無しNIPPER[saga]
2017/06/20(火) 01:25:24.49 ID:smyUCZOA0
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むくりと身を起こす。頬に手を当てて、濡れた跡をごしごしとこする。
千歌「……夢」
夢。私が過ごしたはずの時間。
必死に手を伸ばすのに、夢の残滓は炎のように揺らめいて消えた。
頭がじんと重かった。
「夜ごはん、置いてあるからね」
志満姉が書いたメモが机の上に置いてあった。
あちこちに投げつけたペンやぬいぐるみは、きちんと拾われていた。
ぽろんぽろんと、音がする。
もう真っ暗になった部屋の中、どこからかピアノの音が聞こえてくる。
千歌「梨子、ちゃん……?」
窓をガララと開ける。
少し大きくなった音色は、不思議と心地よく聞こえた。
千歌「諦めないで、会いに来て。もう一度、走り出して……」
夢で聞いた言葉を口にする。
漏れた言葉は、夜闇の中へしゅるりと消える。
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