78: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 21:58:03.82 ID:5UUNa7QZ0
くみちーの体から力が抜ける。歯を食いしばりながら、壁によりかかった。
くみちーはプロデューサーを信頼していた。
信頼していたから、あんなことを言って欲しくなかった。
それは私もだ。
「プロデューサーも、その言い方はないんじゃない?」
私はくみちーの肩に片手を置きながら振り返った。
プロデューサーは反対側の窓に寄りかかって、眼をつぶって頭を抑えていた。
何度か頭を振ってから、重たそうに顔を上げる。
瞳は鈍い輝きを放っていた。
「いいか。俺には義務がある。お前達を預かってる義務が。俺にはお前たちを成功させる義務があるし、あると思ってなきゃいけない。もちろん会社にもな。その為の売り方があるんだ。道筋さ。うまくいってるときに、その道筋を外させる訳にはいかない。やりたいことが全部できるわけじゃないんだ」
「それをなんとかするのがプロデューサーじゃないの?」
私の口調は、少しきつくなっていた。
「そうなんだけどな……実力不足かな」
皮肉げに、プロデューサーは呟いた。
「俺だけで、決められる問題じゃないんだ」
プロデューサーは窓の外に向ける。
ビルの山々の間から覗く夕日を、見ているかのようだった。
はっとなった。
私はとんでもない勘違いをしていたのではないか。
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