58: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 21:29:10.19 ID:5UUNa7QZ0
私は事務所のソファーに坐りながら、夕暮れの景色を眺めていた。
遠くで鳥が隊を組んで飛んでいった。あれはなんの鳥なのだろうか。分からないが、太陽を背にシルエットを作る鳥たちに目を奪われていた。
部屋には私一人だった。
自販機で買ったドリンクを傾ける。サイダーの甘さが炭酸と一緒に口の中をべっちゃりと塗りつぶした。
(そう言えば、美嘉ねえにまだ連絡返してないや)
でも、返信する気にもならなかった。私はソファーに沈み、眼をつぶった。
更衣室でのあーちゃんの顔が頭に浮かぶ。
(あれはないでしょ……私)
もっとうまいやり方があったはずだ。ちゃんと説明すれば、あーちゃんだって分かってくれたと思う。
ただ、そのもっとうまいやり方というのが、全然思いつかなかった。
思いついたとしても、既にあとの祭りだけど。
自己嫌悪が蛇みたいに思考に巻きついてくる。考えをめぐらせようとするたび、ゆっくりと締め上げてきた。
こう言う時は、変に考えない方がいい。短いなりのアイドル人生で学んだことだ。
レッスンで疲れた体が合わさって、私はゆっくりと意識が遠のいていった。
「うりゃ!」
そんな意識が、即座に覚醒した。
背後から誰かが覆いかぶさってきたのだ。
びっくりして顔を上げると、まんまるな眼が私を見下ろしている。
みうみうだった。
165Res/216.11 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20