36: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 20:46:52.49 ID:5UUNa7QZ0
そんな言葉をプロデューサーから聞くとは、思ってもいなかったから。
最初から、理解されないのが当然のような言葉。挑む前から諦めている。
そう聞こえた。
くみちーも一緒だったようだ。呆然としたくみちーと私から、プロデューサーは気まずそうに視線を離した。
ゆっくり腕を動かし、くみちーの手から滑り抜ける。
「じゃあ、行くよ」
プロデューサーは背を向けて歩き出した。時間がないことを思い出したのか、建物を出る直前には小走りになっていた。
まるで、私たちから逃げているようにも見えた。
「……た」
聞き取れないような小さな言葉を、くみちーが漏らす。くみちーはプロデューサーの消えた方に目を向けたまま固まっていた。
顔はなんだか険しい。
「くみちー……?」
「あったまきた! なにそれ!」
ロビー全体に響き渡るような声に、私は目を白黒させた。
「ちょ、ちょ、ちょ。くみちー落ち着いて……?!」
「落ち着けですって!? あんな言い方ある?!」
「分かるけど、うるさいから?!」
通りがかった社員さんや受付のお姉さんがぽかんと口をあけていた。
くみちーもそれに気付いてくれたようだ。
バツの悪そうな顔をしてから、わざとらしく咳払い。
それから、くみちーは憮然と口を開いた。声のボリュームを落として。
「決めたわ、未央」
「なにを?」
「なにがなんでも、やるわよ。サンセットノスタルジー」
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