31: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 20:38:35.81 ID:5UUNa7QZ0
「まあ」
くみちーはそもそも、アイドルのオーディションなんか受ける気がなかった。
最初はモデル部門のオーディションを受けたのだ。
ところが、そのオーディションに落ちてしまった。でも諦めがつかないで歩いていると、アイドルオーディションを発見した。
「普通さ、他のオーディションに落ちたからって飛び込みでオーディションを受けて。そんな子を合格させるかな?」
それをやった本人の口からいうのもなんだが、まあそうだ。オーディションとは、書類審査の後に集団面談がある。
ところが、くみちーは書類審査をすっぽかして、オーディションに乗り込んだのだ。
そしてくみちーは合格した。
合格を告げたのは、プロデューサーだった。
「私、凄い無茶したよね。それは今でもそう思う。でも、そんな無茶な私を、プロデューサーは受け入れてくれた」
静かに、思い出を噛みしめるようにくみちーは言った。
「プロデューサーはいろんな可能性を探してくれるものでしょ? どんな無茶でも、私たちをちゃんと考えて、信じてくれる……なのに、まず無理なんて言うかしら?」
「それは……」
確かにそうだ。
ストレートな拒絶がショックで気付かなかったが、よく考えれば少し変だ。
私の提案はコンセプトからずれていたかもしれない。
でも提案は単なる提案。会議にかける前に、企画の一つをあそこまではばっさりと切り捨てるのはいくらなんでも妙だ。
「だから思うの。もしかしたら、なにか理由があるんじゃないかって。理由があるなら、それを聞きたいじゃない?」
私は自分からしか状況を考えていなかったのかもしれない。
だから、プロデューサーに拒否された時点で、考えるのをやめていた。
でも、拒否した理由が別にあったのではないか。
業務的ではない、プロデューサーという立場から見た理由が。
もしそんなものがあるなら、私も知りたかった。
席を立つと、くみちーに頷いた。
「行こう。プロデューサーに、理由を聞きに」
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