133: ◆saguDXyqCw
2017/06/19(月) 00:11:48.04 ID:0mGdZrJv0
「だが、装飾は装飾だ。あくまでその人を輝かせるための。その装飾品に拘って、舞踏会を欠席するなんてありえるかな?
彼女達はもう、立派な装飾品を持ってる。彼女達に似合った、ぴったしの。なのに彼女達はまだ装飾品を付けたいと言う。
それも、今の彼女たちには似合わない古ぼけた装飾品だ。
その装飾品一つで、彼女たちのバランスががらんと崩れるかもしれないんだぞ? 俺に言わせればそりゃあ」
彼は小さく両手を広げた。
「怖い話だ。奇麗で、それこそ王子様のダンスパートナーになれるような子たちなのに、ちっぽけな装飾品に拘る。その装飾品をつけなきゃ。舞踏会に出ないという。
それはわがままだよ。
誰もがシンデレラさ。でも、ガラスの靴には限りがある」
彼の瞳が私を捉えた。
「分かるだろ? 履けなかった子もいる」
口元は微笑しているようだったが、眼は笑っていない。
もしかしたら、口も笑っているつもりはないのかしれない。
笑みが張りついたまま剥がれなくなっただけなのかもしれない。
嬉しい時も楽しい時も怒っている時も悲しい時も辛い時も。
別れを言わなければならないときも。
笑顔でいるように努力をして。
いつしかそれに疲れて、こちらに来るのをやめたのかもしれない。
「たった一つのちっぽけな装飾品の為に、ガラスの靴を投げ捨てようとする。その意図はなんだと思う?」
沈黙が降り注いだ。
彼は笑顔を張りつかせた顔で私を見ている。
私は眼を伏せた。自販機の唸りだけが空気を揺らした。
顔をあげて、ゆっくりと口を開いた
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