104: ◆saguDXyqCw
2017/06/18(日) 23:08:51.37 ID:5UUNa7QZ0
私は急いで立ちあがろうとした。
でも、体はすぐには言うことを聞かなかった。
電池が切れたラジコンみたいに、ぴくりとも動かない。
「あ、あれ?」
「未央ちゃん?」
茜ちんも心配そうに私の顔を覗き込んでくる。
「平気、平気」
手を伸ばしたあーちゃんの手を借りて、なんとか起き上がることができた。
「ほら、大丈夫です。やりましょう」
しかし、トレーナーさんは頭を縦には振らなかった。
「駄目だ、少し休憩しよう」
「でも、時間が」
「本田。これはトレーナーの私の指示だ。十分間休憩だ。水分はしっかりとるように」
トレーナーさんは端に置いてあったタオルとスマホを手にレッスンルームを後にした。
「あはは……ごめん。確かに疲れてるかも」
二人の視線が痛かった。誤魔化すように笑って飲み物を飲もうと思った。
でも、いつもならタオルと一緒にあるはずの飲み物がない。
「私、飲み物どうしたっけ?」
「そういえば、今日は飲み物を持って来ていませんでしたね」
茜ちんの言葉に、私は少し驚いた。とんだうっかりをしてしまった。
「あれ、そうだっけ?」
「未央ちゃん。私の飲む?」
あーちゃんが差し出してきたけど、私は首を振った。
「いいよ。自販機で買ってくるから」
「なら私が買ってきましょうか?」
「茜ちんも大丈夫だって。ちょっと行ってくる」
二人から逃げるようにレッスンルームを出る。
酷く気が重かった。
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