70:名無しNIPPER[saga]
2017/06/18(日) 18:42:58.54 ID:oprjNj9s0
「思えばボロボロになった玩具にはある共通点がありました。
あれらは音を発する玩具、つまり打楽器。それを幼少時の硝子さんに与えましたね。」
「あれは…硝子が夢中になって遊んでいるから…楽しいと思って…」
「夢中になってですか。
なるほど、それは本当のことなのでしょう。
しかし当時の硝子さんが純粋に楽しんでいたのかは疑わしいと思うのですがねぇ。」
「何で…そんなことを…当時のことを知らないあなたにそこまで言われる筋合いは…」
「確かに僕はその当時のことを知りません。
しかし年端もいかない女の子が玩具を乱雑に扱うこと。それに硝子さんの障害。
これらを組み合わせるとある事実が浮かび上がります。
その玩具は硝子さんが楽しむためではなく
母親であるあなたが硝子さんの耳が正常か確かめるために与えたものではないのですか。」
その指摘を受けて八重子の表情は
まるで図星でも突かれたかの如く血の気が引くかのように青ざめた。
幼少時の硝子に与えた玩具は純粋に子供を楽しませるために与えたのではなく
自分が硝子の耳が正常であるか確かめるために与えたもの。
しかしそれが何を意味するのか?
「硝子さんの障害が発覚したのが3歳と聞いて奇妙に思えました。
幼少時の難聴というのは一般的に先天性であることがほとんどです。
それなのに3歳になるまでその症状が出なかった。これは実に疑わしい。
新生児には聴覚検査が行われます。その段階で症状が判明しないとは考えにくい。
しかしその症状を母親であるあなたが隠していたとなれば話は別です。」
「何で…私がそんなことを隠さなきゃならないんですか…」
「それはあなたが先ほどから仰っている『普通』という言葉にあるからですよ。」
そう、先ほどから八重子は頑ななまでに硝子のことを普通と表していた。
確かに硝子は難聴という障害を抱えている以外は至って普通の少女だ。
だが右京たちから見れば八重子は硝子のことを必要以上なまでに普通として扱っている。
それはある意味、親のエゴというべきものだ。
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