15: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:13:15.41 ID:bk9mFZZ70
これまで境内に足を踏み入れたことはなかったが、神社の前を通ったことはあった。
奥行きがないため、割とせせこましい印象を受けたことがある。その中を人がごった返していた。
「すごいな、これみんな初詣なのか」
16: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:16:28.30 ID:bk9mFZZ70
「そういやお前は甘酒嫌いだったよな」
「うん、生姜が苦手なの」
「惜しいなあ、こんなにうまいのに」
17: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:17:18.31 ID:bk9mFZZ70
「ねえ」
「うん」
18: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:18:14.33 ID:bk9mFZZ70
「会ってない間、元気にしてた?」
最後に辿り着いた公園のベンチに腰かけて彼女が尋ねてくる。
「ああ。そっちこそ、会ってない間は一体なにしてたんだ」
19: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:19:49.87 ID:bk9mFZZ70
「でしょ? 一度行ってみたかったんだよね。いい機会だったから」
「だからって、制覇してしまうこともなかっただろうに」
思わず苦笑してしまう。
20: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:20:55.15 ID:bk9mFZZ70
「……まだやり残したことは、あるのか?」
寝入りかけの猫を撫でるように、慎重に尋ねた。
21: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:21:41.17 ID:bk9mFZZ70
一度、空を仰ぎみれば東の彼方は既に白み始めている。ふたりだけの世界がゆっくりと、確実に剥がされていくのがわかる。
ふと薄青い空の中に、小さく瞬く星が浮かんでいるのに気付いた。ふたりを閉じ込めていた世界が取り払われている。
「そろそろ行かなきゃ」
22: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:23:05.16 ID:bk9mFZZ70
「今度実家に帰ったときは、会いに行くから」
「うん、待ってる」
「供え物はなにがいい?」
23: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:24:27.36 ID:bk9mFZZ70
「初日の出なんて、初めて見た」
目を細めて朝日を拝んだあと、彼女の方に視線を戻すと、もうそこには誰もいなかった。
24: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:25:21.28 ID:bk9mFZZ70
以上になります
ありがとうございました!
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