五年と少しの歳月に
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21: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/06/14(水) 00:21:41.17 ID:bk9mFZZ70
 一度、空を仰ぎみれば東の彼方は既に白み始めている。ふたりだけの世界がゆっくりと、確実に剥がされていくのがわかる。
 ふと薄青い空の中に、小さく瞬く星が浮かんでいるのに気付いた。ふたりを閉じ込めていた世界が取り払われている。

 「そろそろ行かなきゃ」

 やがて彼女は小さく呟いた。

 「もうなのか」


 「そうなの。だから、あのね」


 「うん」

 「……やっぱりなんでもない」

 彼女は一番言いたかったことを胸の奥にしまい込んだように笑った。


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