21:名無しNIPPER[sage]
2017/06/15(木) 20:38:55.43 ID:qMnGGMqX0
木曜日
「もうすぐで着きマスヨ」
メグが私に声をかけます。私は、後少しの道のり。と日傘を握り気合をいれます
私はメグと一緒に町中をキビキビと歩いていました
お昼ご飯を食べた後。私がシレンちゃんの髪を梳いていると、メグがやってきて私をお茶に誘ったのです
行き先はメグの行きつけのお店らしく、メグは迷いのない足取りでそこへと向かっています
メグの行きつけの店とはどんな所なのでしょう
いかにもアメリカンな感じで、美味しいコーヒーを出すのでしょうか。もしくはメニューにカップ麺があるのでしょうか
そこでふと、私の脳裏にとある可能性が浮かびます
美味しいコーヒーとカップ麺を所望したいなら、コンビニに行って挽きたてコーヒーとカップ麺を購入し、イートインスペースで飲み食いすればいいだけです
もしかしたら、私はイートインスペースの広いコンビニに案内されているだけなのかもしれません
まさかの可能性に私が慄いていると
「ほら、あそこデス」
メグは道の先を指さしました
幸い、そこにはコンビニの看板はありませんでした。しかし、その店の入り口を見て私は目を見張ります
『DIANA』と書かれたお店の看板の下にある入り口の扉は胸から腰にかけてまでしか存在しないスイングドアでつまりそれは俗にいうウエスタンドアで端的にわかりやすく言えば西部劇の酒場のような扉です
「さ、入ってくだサイ」
堂に入った様子で西部劇のガンマンのように中へと入るメグ。私も恐る恐る中へ入ります
店内もまたいかにもといった様子で、間接照明の薄暗い空間の下、円形のテーブルが配置され、正面のカウンターの奥では、お酒のボトルが並んだ棚の前で渋そうなバーテンダーさんがグラスをきゅっきゅと拭いています
「メグ、ここって荒くれ者の集う所じゃ……」
「大丈夫デス。ランチタイムはただの喫茶店でスヨ」
迷うことなくカウンター席についたメグの隣に、私も腰掛けます
「ブルーマウンテンをくだサイ」
「私はミルクを」
このまま雰囲気にのまれてラム酒やバーボンやマティーニや月桂冠を頼もうかと思ったりもしましたが、私は誇り高きフランス淑女。日本でのお酒は二十歳からです
バーテンダーさんはコーヒーメーカーにお湯を注ぎ、抽出している間に『本内牧場 産地直送』と銘打たれた1リットルほどの牛乳瓶をとりだし、優雅な動作でグラスへと注ぎます。牛乳にも拘りがあるとは素晴らしいお店です
「どうぞ。パリジェンヌのお嬢さん」
パイプオルガンのように重厚なバリトンボイスで私の前にミルクを差し出しすバーテンダーさん。続いてメグの前にもコーヒーのカップを置きます
ミルクを一口飲んでびっくりしました。とても甘くて美味しいです
「どうでスカ?ここの飲み物はどれも美味しいでスヨ」
そう言ってメグは自分も挽きたてのコーヒーを飲みます。ブラックで飲めるのは大人っぽくて羨ましいです
コーヒーを飲んで落ち着きを取り戻した私は、改めて店内を見渡しました
円形テーブルのうちの一つでは、和服を着た二人の老人が向かい合ってチェスに興じています
また、カウンターの端では大学生くらいの青年が、コーヒーを飲みながら水滸伝を読んでいました
店内の右側にはステージのようなスペースではピアノ、尺八、馬頭琴、タブラによる合奏が行われています
総合的に見てもはやどこの国にあるのかよくわからないような酒場に迷い込んだ気分です
とはいえ、店の雰囲気は落ち着いた感じで、西部劇の酒場というよりイギリスのバーといった趣です
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