90:名無しNIPPER[saga]
2017/06/14(水) 18:25:19.93 ID:VqWHRdm5O
「そっか」
「私、ただ、会ってね……仲直りしようって思っただけだったんだ。また、水泳始めて欲しいなって。でも、そんな事言われても困っちゃうよね。だから、会えなくて正解だった。でも、私のせいで、将来の色々な事を奪ってしまったなって……」
曜ちゃん、前に私に言った事と逆の事言ってる。
私は反論したかったけれど、曜ちゃんの言葉に耳を傾ける。
「色々、言われるの、覚悟してたつもりだったんだよ。なのに、いざ、会えないって分かったら、私……ホッとしてるんだ」
曜ちゃんは目元を腕で隠した。
「色々な大会に出て、たくさんの人の悔しさを目の当たりにして、哀しんでる姿を見たのに、私……やっぱりそれを正面から受け取るのが怖かったんだ。誰かを傷つけるのが嫌だなんて、思ってたのに……傷ついた人を受け止めるのが怖かったんだ……会えないってホッとした自分が、本当に嫌だよ……っ」
震える声に、私も鼻の奥がつんとした。
「曜ちゃん、誰でもそうよ。曜ちゃんだけじゃない……怖いものよ」
私は曜ちゃんを抱きしめようと肩に手を置いた。
けれど、曜ちゃんはそれを拒否した。
「私に優しくしないでっ……」
混乱しているのが分かった。
ずっと堰き止めていた感情が溢れ出てきたのだ。
不謹慎だったけれど、私にはそれが本当に愛おしかった。
「私はね、あの後輩はやってはいけない事をしたと思ってる。だから、私はあの子の事を好きになれない。許す許さない以前にね。でも、それでもあの子はちゃんと、きっと別の誰かに愛されてる。曜ちゃんが悩まなくても、あの子はきっと誰かに愛されてる」
私の話しも聞きたくないのか、逃げようとする曜ちゃん。
ほんと、聞きたくないことは聞かないなんて。
幼稚なんだから。
私は、曜ちゃんの腕を掴んだ。しっかりと。
「あのね、曜ちゃんは……悩むのが苦手なだけなの。脳筋なの。そこの所、分かってる? 悩むのが得意な人はね、悩み過ぎないの」
そう、千歌ちゃんみたいにね。
「のう、きんじゃっ……ないもんっ」
鼻水ずるずる言わせながら、曜ちゃんが言った。
「要するに、思い通りにならないと気が済まないのよ。でも、それを言わないからイライラするし、モヤモヤする」
そして、図星を突かれるのが嫌なの。
曜ちゃんはいやいやするように、私から離れようとする。
「梨子ちゃんの言ってることっ……分かったから、離してよっ」
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