54: ◆T4kibqjt.s[saga]
2017/06/23(金) 01:30:20.18 ID:nE0G2m1V0
『……………恵美っ』
とても苦しそうな声。Pの辛そうな顔が目に浮かぶ。やっぱりアタシ、夫を困らせるダメな奥さんだ。さっき琴葉に言われたばっかなのに。
「ひくっ…すんっ…うぅ…うっ…」
「メグミぃっ…」
エレナに力いっぱい抱き締められる。ほんのりとお花の香りがする。柔らかくて、あったかい。
「…恵美」
琴葉は泣きじゃくるアタシの目を親指でそっと丁寧に拭いながら、ゆっくりと首を振った。涙が拭われて視界がクリアになったお陰か、はたまたエレナに抱き締められて心が少し温まったお陰か。アタシは少しだけ冷静になれた。
一分程たって、ようやくしゃくり上げるのが止まってきた。アタシが話せるようになるまでの間、Pはただ黙って待っててくれてた。
「ひくっ…ごめんなさい、わかってる。こんな事言ったって、ただ困らせちゃうだけだよね。もう…ほんとに大丈夫だから。…あと、自分の事棚に上げて色々言っちゃって…ゴメンね」
『…………いや、俺もごめん。いつもあんなに近くに居たのに…恵美の事、なんにも分かってあげられてなかった』
「ほんとだよー?帰ったらおしおきだかんね」
アタシのバカ。雰囲気を和らげるにしたって、もっと優しい事は言えないの。
『あぁ、甘んじて受けるよ』
それでも、Pは優しい。
「…ねぇ、P」
『ん?』
今言わなかったらずっと言えない。言わなきゃ。
「………ぁ………あっ…い…」
さっきは怒りと勢いであんなにスラスラ言えたのに、冷静になると喉に詰まって全く出てこない。
「愛してる」って、こんなに難しい言葉だったんだ。
「メグミ」
「頑張って」
けど、この二人が一緒なら、アタシは何でも出来る。
「…愛してるよ。待ってるから、お仕事頑張ってね」
『…うん。俺も愛してる』
101Res/77.29 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20