2:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:19:14.20 ID:WImztSHAo
唐突ではあるが小日向美穂は純情な少女である。純粋と言ってもいい。この荒んだ現代において珍しいほどに純という漢字の似合う、汚れを知らない少女だ。まさしく天性のアイドルである。
アイドルは排泄なんてしない、なんて拗らせたファンが極々稀に主張することもあるが、小日向美穂であればそれも何もおかしくはないのではないか、とすら感じさせるほどである。
──とは言っても、である。
3:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:19:44.11 ID:WImztSHAo
(え、え、え、えっちな本!?)
そう、いわゆるエロ本である。
このご時世、デジタルが持て囃されアダルトコンテンツも片手で持てる携帯端末ひとつあればそれで済むと言われているようなこんな時代に、エロ本である。
4:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:20:13.13 ID:WImztSHAo
とは言ってもこの部屋を使う人間は限られている。アイドルか、事務員、プロデューサー。他は少しの時間ではあるが業者の人などがメンテナンスで入ってくるくらいか。
……いや、いやいや。
いくらなんでも職場にこんなものを持ってくる人なんているわけがない。
こ、こんな……こんな……ごくり。
5:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:20:39.26 ID:WImztSHAo
年相応に、気になる。汚れなきアイドルであっても、気になるものは気になるのだから仕方がない。思春期というものは誰にだって訪れるものであり、辿るものであり、過ぎていくものである。
たとえ彼女がアイドルであり、汚れなき少女であり、小日向美穂だとしても思春期は平等に訪れるものなのだから、えっちな本に興味を抱くのは何もおかしいことではない。
むしろ、十七歳にして初めて目撃し、見てみたいと思うなんてこと自体が既に天然記念物染みている。大抵の思春期の青少年少女であれば、十四歳で洗礼を受けているのが世界の常識である。
6:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:21:07.43 ID:WImztSHAo
美穂は辺りを少し見渡す。人の気配はない。今、この部屋にいるのは自分だけだ。隠しカメラの可能性はさすがに美穂は考慮できていないけれど、とは言えアイドルに仕掛けるどっきりにしてはたちが悪い。
清純正統派キュートアイドルとして売り出している小日向美穂に対して、エロ本を見たときの反応をうかがってみたなんてどっきりを仕掛けた日にはテレビ局はその日のうちに大炎上して木っ端微塵だ。
過激派ミホニストによる壮絶な襲撃が予想される。
すぅ、はぁ。深呼吸をして、あらためて机の上にあるエロ本に向き直る。
7:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:21:33.42 ID:WImztSHAo
「……………………う、うわわわ」
凄い。物凄い。やばい。たいぎゃやばい。何がどう凄いのか、やばいのかを具体的に言うことは、さすがにアイドルとして、乙女として、少女として、或いは善良なる一般人として、できないけれども、とにかくやばいし、凄かった。
まさしく未知なる世界。知っているはずの人体であるというのに、そのようなことになっているとは、そんな使い方をするとは、いやいやなにこのグロテスクな電動マッサージ機は、みたいな。
8:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:22:06.93 ID:WImztSHAo
「あわわ………ふわわ……はわわ」
美穂は相変わらず顔を真っ赤にしながら、たまに本を遠ざけたり、目を覆ったりしながらも読むことをやめない。
けっして官能的ではない、ただただ純情な少女が慌てているだけの変な声を出しながら、エロ本を読み耽る。
9:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:22:33.56 ID:WImztSHAo
「ひゃああっ!?」
「わあっ!?」
10:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:23:00.12 ID:WImztSHAo
「な、なんですか美穂さん、そんな声を出して。びっくりするじゃないですか。おや、何か読んでいるんですか?」
なので、少しでも幸子が動けば当然、何か雑誌らしきものを広げているということは遠目でも確認できてしまうのだ。
しかし、何を読んでいると聞かれると答えに困る。何を読んでいるというか、ナニするものを読んでいます、なんて正直に答えるわけにはもちろんいかない。
11:名無しNIPPER[saga]
2017/06/06(火) 00:23:31.86 ID:WImztSHAo
まあ、美穂という天使がそのような言葉を使うはずもなく、そもそもナニをする本です、なんて発想をこの場で思いつくほどに余裕もない。
美穂の頭にあるのは、ただシンプル。
如何にこの場を乗り切るか、だけだ。
限りなく不可能にちがいないことを如何に可能にするか。不可能を可能にすることができる熊本女子になれるかだ。
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