3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/04(日) 17:52:24.60 ID:uS13NFUz0
「冷蔵庫とかその辺にあるモノは食べていいから。 あと、お前のマスターが迎えに来たら勝手に帰っていいからな」
翌日、拾ったVOCALOIDの身支度で睡眠時間を2、3時間削った俺は、眠い目をこすりながらドアを開けた。
いつの間にか雨もやみ、濡れたアパートの手すりに日光が反射している。
「じゃ、行ってくるよ。 ……初音ミク」
昨日調べたところ、こいつは初音ミクという名前のVOCALOIDらしい。
初音ミク、テレビやらネットやらでよく知っていたから「ああ、こいつがあの」と一人で合点した。
「……!」
『初音ミク』と呼ばれたそれは少し嬉しそうで、俺を真似てかぎこちなく手を振った。
恋人もおらず、そろそろ30に手が届きそうだが、彼女に見送られるのはこんな感じなんだろうか。
見た目はすっごく可愛いんだが、ロボットに見送られるのは何とも虚しいな。
苦笑して家を出た。
「ま、マスターが迎えに来る数日だろうな。 帰ったら警察にも言っておくか」
VOCALOIDの所持者をマスターと呼ぶのは、どこで聞きかじったのだったか。
昨日深夜に調べてみたところ、それよりは幾ばくか詳しい情報をいくつか知ることが出来た。
まず、VOCALOIDの動力は電気だ。
不思議な事にあいつには、HPに書かれている位置を見てもプラグはなかった。
食事や睡眠などの大凡人間らしいことはできるという事らしいから、こいつは食べ物で動くタイプのそれなんだろうと無理矢理納得している。
また歌はよく分からんが、入力しないと歌わないらしい。
当然だ。勝手に歌い始めるのは酔ったおじさんだけで十分だ。
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