天海春香はアイドルになりたい
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6: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 01:52:35.77 ID:wOH40UWj0
愛おしそうに笑った春香はそっと胸に手を当てる。その動作は何故か悲しげだった。

「だけど、時々考えるんです。アイドルじゃなかったら私はどうしていたのかなって。辞めたいとかそういうこと、考えてるわけじゃないですけど」

もしもの話。誰もが考えたことのあるifの世界。自分が自分でない時のこと。
以下略 AAS



7: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 01:53:17.14 ID:wOH40UWj0
春香がアイドルでなかったなら、世界はどんなだろう。街の広告から春香が消えて、テレビの画面から春香の笑顔が消えて、ステージに春香はどこにもいない。

それは、ひどく淋しく、なんてつまらない世界だろうと思う。

「そうですね……。例えば、毎日学校に行って、休み時間には友達とおしゃべりをして、放課後は寄り道して、お休みの日にはどこかに出かけて……」
以下略 AAS



8: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 01:53:59.15 ID:wOH40UWj0
「いまは……、毎日事務所に来て、空き時間に他のアイドルと話をして、レッスンが終わったらたまに寄り道して、オフの日は……」

「あんまり、変わらないな」

そう言うと春香は微かに頬を緩めた。その表情にどこか安堵する。
以下略 AAS



9: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 01:55:02.15 ID:wOH40UWj0
「みんなには、会えなかったですよね……。楽しく話すことも、悩みを聞いたり聞いてもらったり。ただステージの上で輝くみんなを応援してるだけで……」

それは、ifの世界の話。

「雑誌を買って、テレビに出ているみんなを見て、クラスの子と昨日の番組の話なんかをして……」
以下略 AAS



10: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 01:56:03.54 ID:wOH40UWj0
そう漏れた言葉はきっと春香の本音で、彼女自身が見つけたかったことだった。

春香がアイドルでなくても世界は回っていくし、日本は壊れたりなんかしない。

だけど、それでも。
以下略 AAS



11: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 01:57:35.86 ID:wOH40UWj0
「……そっかぁ。そう、ですよね。うん、そうだよね」

春香は何かを納得したようだ。その瞳に迷いは見えない。春香は真っ直ぐこちらに顔を向けて目を合わせてきた。

澄んだその瞳に映るのは希望か、それとも未来か。
以下略 AAS



12: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 01:59:38.59 ID:wOH40UWj0
「私、もう一度天海春香として人生をやり直す権利が与えられたとしてもきっと、同じ道を選びます」

もう一度、アイドルに。
もう一度、あなたと。

以下略 AAS



13: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 02:02:53.53 ID:wOH40UWj0
これまで進んできた道がどんなに苦しかったか経験していても、この道がどれほど茨だと知っていても、これから進む道がどうなるかわからず前すら見えていなくとも。

春香は、この道を、「アイドル」を選んでしまう。

これは彼女の性であり、もはやこれは運命と言うに等しい。
以下略 AAS



14: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 02:03:59.85 ID:wOH40UWj0

「プロデューサーさんはアイドルって何だと思いますか?」

アイドルとは、偶像であり崇拝の対象。だけどその偶像の本当を知っているのは誰だろう。

以下略 AAS



15: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 02:09:50.36 ID:wOH40UWj0
たとえば、そう。

目の前に座る女の子――。

「さぁ、なんだろうな」
以下略 AAS



16: ◆eF65jN7ybk[saga]
2017/06/04(日) 02:13:18.43 ID:wOH40UWj0
* * * * *

ねぇ、プロデューサーさん。

私はあなたの傍でアイドルになりたい。
以下略 AAS



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