3: ◆XUWJiU1Fxs[sage]
2017/06/02(金) 23:19:30.55 ID:msBbbnVco
「後任は信頼できる後輩に任せてある。だからまゆの活動に支障は」
「まゆも……アメリカに行きます」
「! それは……ダメだよ。まゆは日本に、残るべきだ」
「っ! どうしてですか!?」
柄にもなく大きな声で叫んでしまう。心の奥底からの激情が胸を焦がして口から放たれて。わがままを言っていることくらい、理解しています。最後まで手が焼ける女の子で、嫌われたって文句を言えないのに。
「まゆは……皆の憧れになる。シンデレラとして、君に憧れる子も出てくるし……これからのアイドル業界を引っ張っていってほしいんだ。それがガラスの靴を履いた女の子の、責務だと俺は思っている」
それなのに俺だけアメリカに行きたいって無責任もいいところだけどな――そう言ってプロデューサーさんは自嘲気味に俯きました。それはいつか、読者モデルをやめてアイドルになった私とオーバーラップしているように思えました。
結局、夢や恋を叶えることは……何かを捨てるということなんです。私だって、よくわかっていたことなのに。
「……少しだけ、時間をください」
「えっ?」
「今のまゆじゃ……プロデューサーさんを笑顔で見送れないから……気持ちの整理、させてもらえませんか?」
「わかった」
その後、プロデューサーさんの運転する車で寮まで送ってもらいました。いつもなら私が積極的に話しかけているのに、2人して言葉はなくカーラジオから聴こえてくるラジオドラマだけが虚しく響いていました。
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