日野茜「文香ちゃんから別れたいと言われました」
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3:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:22:56.17 ID:JJsq6z5I0
文香としては珍しく、顔を上げて真っ直ぐ相手を見つめていた。
茜もただならぬ雰囲気を感じ、居住まいを正す。
「……別れたいと、思います」
4:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:23:45.07 ID:JJsq6z5I0
「ごめんなさい……茜さん。でも、私は中途半端な気持ちでいたくありません」
「大丈夫です! 私は文香ちゃんのこと、大好きです!」
「いえ……そういう、ことではなくて……」
5:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:24:15.64 ID:JJsq6z5I0
茜が絶句するなんてことはあまりに珍しく、文香はその事実を前に視線の行く先を探して顔を下げ、その表情は前髪に覆われていた。
「……我が儘ですみません」
「いえ! そんなことありません! 文香ちゃんのそういうところ、大好きですから!」
6:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:24:51.59 ID:JJsq6z5I0
だったら、せめて出来ることは。
「私は、この半年間、楽しかったです!」
「すみません……私は、誰かとお付き合いするということをよくわかっていなくて……」
7:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:25:18.11 ID:JJsq6z5I0
冷めきったお茶を飲み干し、今を終わりにすべく、二人はゆるやかに席を立って会計へと向かった。
文香は申し訳ないと感じているのか、こちらを見ようともせず、複雑な表情をしていた。
茜は頭に霞がかかったような感覚のままレジで伝票を渡して、割り勘の分の会計を告げられてもまるで頭に入って来ず、数字が認識できない。
8:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:27:06.57 ID:JJsq6z5I0
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
日が傾き始めた中、二人は大通りを駅に向かって並んで歩く。
いつもなら繋いでいた手は、人ひとりぶん空いていた。
9:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:28:04.10 ID:JJsq6z5I0
いつもより茜の歩は遅く、文香の歩は速く、駅の改札口に到着した。
家への電車は逆方向なので、ここで別れたら、それで終わり。
「茜さん……本当にごめんなさい、自分一人で考えてしまって」
10:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:28:39.77 ID:JJsq6z5I0
いつも握っていたはずの文香の手は、すぐそこにあるのに、世界が隔絶されたように遠い。
本当に、好きでいてくれてた?
本当に、楽しかった?
11:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:29:19.35 ID:JJsq6z5I0
明確な拒絶。
文香の横顔と碧い瞳は、見たことがないほどに鋭かった。
茜は声を発することも出来なかった。
12:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:30:37.68 ID:JJsq6z5I0
茜の手は宙に浮いたまま。
文香は振り返りもせず去っていった。
文香の通過した改札が、来るものを拒む壁のような、可視化された無機質な境界線のようなものに感じられた。
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