2:名無しNIPPER[sage]
2017/05/25(木) 23:28:47.23 ID:FJ75OzKBo
「んじゃ」
「えっ」
ケージを手にした俺の腕を、女がいきなり鷲掴んだ。
痛ぇ。どれだけ馬鹿力なんだ?
「なに? これ持って早く帰りたいんだけど」
「いやいやいや、冗談はやめてくださいよ」
冗談だと? 一体何が冗談か。
甚だ不服だ不満だと俺が肩眉をつり上げて見下ろすと、
女は机の上の銅貨三枚を指さし言う。
「あのですね、どこの世に三十円で買えるペットがおりますか」
「違うのか?」
「当たり前です!」
女が再び空いている方の手で指を三本おっ立てる。……だよなぁ、流石に。
勢いで誤魔化せないかと思ったが、どうやらそうもいかんらしい。
俺はやれやれと深くため息をつくと、一体いくらになるのか考える。
この珍しいケージの中身から考えて、やはり三千、三万、三十万……は露店じゃちょっと高すぎないか?
「三百円。きっかし百円三枚です」
「買った!」
今度は気前よく全額払い、俺はケージを手に取った。
「まいどありー」
こうして上機嫌な女の声を背中に受けながら、俺は帰路についたのである。
早く帰ってこの生き物をあれこれ弄くり回そうと、少年のように心逸らせながら。
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