276: ◆PChhdNeYjM[saga]
2017/06/13(火) 22:42:12.64 ID:7v9q17ymO
『気が付けば私は、貴方に恋をしていました』
『ええ、そうです。会って間もない、4月のうちに』
『尻軽女だって思いましたか? でも、本当なんです』
『あなたは、私の初恋の人でした』
『いつか、あなたと旅行に行けた時は、まるで天国にいるかのような気分でした』
『だからね、男さん』
『私はもう、満足です』
『あなたから、充分にたくさんのものを与えてもらいました』
『唯一の心残りは、私からあなたに、何も返せなかったこと』
『与えてもらうばかりで、ごめんなさい』
『あなたと過ごした日々は、今までの悲しい人生なんて、全部忘れられるくらいに最高の、夢のひと時でした』
『最高の時間を、ありがとう』
『さようなら、男さん』
男「あ……あぁ……!」
男「ひぐっ……うぅ……!」
クシャリ、と手元で音がした。
俺は無意識に、その紙を強く握って潰してしまっていたのだ。
けれど、俺は手を離すどころか、ますます強く力を篭めた。
クシャクシャに丸まってしまうだとか、そんな些細なことはどうでも良かった。
感情が渦を巻いて、飛び出していく。
崩壊する、何もかも。
俺を形作っていた全てが。
俺を支えていた、何かが。
決壊が破れたかのように、涙が溢れて、止まらなかった。
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