232: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/05/21(日) 15:18:40.11 ID:Ffb9jAHh0
お姉様は、エミの後ろ────東へと逃れていく人々の姿に目を向ける。
「かつて私達が海の上に掲げて戦ったハーケンクロイツは、今のドイツにとっては思い出したくない記憶だと知ったときは、流石に私もショックだったわ。快く思わない人に罵詈雑言を受けて、傷ついたことだってある。……でもね、エミ。それは当然のことなのよ」
お姉様は優しい笑顔で、エミの肩を叩く。いつもと少し違う、諭すような口調で語りかける。
「人間は全員が違う考えを持っている。私達が船だった80年前だって、正義の旗印だった鍵十字を嫌い罵倒していた人たちはいたんだもの。たとえ私が完璧超人のヒーローだったとしても、きっと世界のどこかで私をよく思わない人はいるはずよ。
私がzweiへの改修を受けた日本では、あの国の軍人達は私なんかより遙かに酷い罵倒を受けていたわ。勿論浴びせてた人間はごく一部だけどね。
でもそれは、その人たちが生きているからこそ抱く感情なの。
私達艦娘は、そしてドイツ軍は、世界中のカメラードは、彼らが生きて、私達を罵倒する権利も守るために戦うのよ」
お姉様はエミの眼を真っ直ぐに見つめ、決意に満ちた声で告げる。
「それに、たとえ戴く旗が変わっても、ここはドイツ人が住まう地よ。
たとえ時代や意見が違っても、貴女たちは“あの人達”が80年前に守ろうとした国の国民よ。
だから私は、誰に認められるとか認められないとか関係ないわ。
私がBismarck zweiである限り、絶対にこの国を、この世界を、貴女たちを守ってみせる。
“あの時”できなかったことを、今度こそやり遂げたいの」
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