183: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2017/05/18(木) 01:00:18.38 ID:qcFlP+vx0
セントは、在欧アメリカ軍の司令部から送られてきている二枚目の写真に目をやる。それはAngel-Ringが撮影した画像の一部を拡大したもので、大地を覆う巨大な黒い染みの中に、少しだけ色合いの違う「何か」が混じっていた。
(’e’)「………鳥、か?」
青みがかった黒の中に、更に小さな漆黒の点が幾つかあった。丸みを帯び、鈍い光沢を放つその点は分かりやすいように白い線で縁取られている。
そして縁取りの形は、セントが言うとおり翼を広げ飛翔する猛禽類を思わせた。
「USEUCOM上層部では、その飛行物体による襲撃で攻撃隊は全滅したと見ているようです」
(’e’)「まあそうなるな。こいつは完全な新型だ」
Helmとも、Ballとも明らかに一致しない形状。加えて、ある程度の高度からとられたはずの映像で既に視認可能な大きさなら翼を含めた全幅は少なく見積もっても8メートルから10メートルになる。
そして、サイズ的に戦闘機からの視認・ロックオンは十分に可能だ。にもかかわらず、攻撃隊は極めて短時間で殲滅された。
考えられる可能性は三つ。
攻撃隊が思わぬ奇襲に動揺して対応できなかったか、この“染み”の影響で計器や兵装に異常が発生しまともな迎撃行動が取れなかったか。
或いは、ただ単に性能面で圧倒され手も足も出なかったか。
(’e’)「…………深海棲艦の進化、か」
(’e’;)
口に出してみて、セントは自身の言葉に背筋を冷やす。
確かに、深海棲艦のこの“進化”は必要事項ではあったかも知れない。艦娘の出現により「陸上活動ができる戦艦・空母」としてのアドバンテージが薄まり、従来の艦載機はポルトガルで人類側の陸上戦力に多数が撃墜された。太平洋においては、艦娘との連携によるものとはいえほぼ無力だったはずの人間の航空戦力が空対空戦闘において深海棲艦側を圧倒した。
だが、どちらも発生した時期としてはようやく一ヶ月経つか経たないかだ。
もし、深海棲艦が人類側の新戦術に対応してこの兵器を造り出してきたのだとしたら───あまりにも、早すぎる。
生物学的な、「進化」としてみても。
技術的な、「進歩」としてみても。
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