【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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9: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 21:38:20.40 ID:z+wGLY660
「うわあああーっ!」

 俺は土手をごろごろと転げおちた。
 視界の上下左右が激しく入れ替わって、地面に身体のいろんなところをぶつける。
 転げ落ちるあいだ、両腕を使ってせめて頭だけはガードした。

 身体が命の危険を感じたのか、生まれてから今までの想い出がフラッシュバックする。
 田舎の風景、小学校時代、幼なじみのアイツの顔――

 とはいえ、河川敷は数メートル、傾斜も緩く芝生で守られているので命の危険はない。
 土手の下で体はとまり、俺は体を起こした。

「いでで……な、なんだ」

「すっ、すいませんっ! 大丈夫でしたか!?」

 声のする方を仰ぎ見る。
 若い女のような高い声だったけれど、夕日が逆光になり、姿はまぶしくてよく見えない。

「ああ、怪我はしてないと思うから……」

 立ち上がり、体中に着いた草や土を手ではたき落とす。
 そのあいだに、女はこちらに向かって土手を降りてきていたようだった。

「すいませんっ!」

 女は俺の前まで来ると、直立して、深々と頭を下げた。

「空を見ながら走っていたら、土手から人が昇ってきたことに気づきませんでしたっ! すいませんっ!」

 やたら大きな声で謝っている。

「俺は大丈夫だから、とりあえず顔をあげて……」

 俺が声をかけると、ようやく女は顔をあげた。

「……あ……」

 顔が見えたとき、俺の口から思わず声が漏れた。

 女、というよりはまだ少女と言ったほうがよさそうだった。
 百五十センチあるかないかの小柄な少女。

 夕日を受けて栗色に輝く長い髪は、後ろでアップにまとめられている。
 長いまつげ、大きな目はこの世に不幸な運命なんてひとつもないと信じてるかのようにまっすぐだった。
 太陽みたいな明るい表情のその少女は、少女の持つ雰囲気そのままの、太陽みたいに赤いシャツを着て、俺をまっすぐに見ていた。

 ――似てると思った。が、こんなに若いはずはない、同一人物ではない。……似ているだけだ。

「すいませんっ! お怪我はありませんでしたかっ!」

 俺は我にかえる。似ているだけだ。
 こんなにやかましく暑苦しくはなかった。

「あ、だ、大丈夫」

「すいません、夕日を見ながら走り込みをしていて、前方不注意でした!」

 小柄な体に似合わず声が大きい。俺は思わず耳を塞ぎそうになった。

「いや、俺も階段じゃないところから上がってきたし、怪我もないから、本当に大丈夫」

「スーツ、汚れませんでしたか!」

「濡れてないしこのくらいなら。どうせそろそろクリーニングに出そうと思ってたところだし」

「それなら、よかったです!」少女はその場で軽く走り出す前の腕振りをはじめる。「では、走り込みの途中でしたので、これで! ほんとうにすいませんでした!」

 少女は礼をすると、俺に背を向けて走り出す。
 そのとき。


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