【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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8: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 21:35:26.64 ID:z+wGLY660
「ま、名刺はほとんど配り終えたしな」

 俺は自分の名刺ケースを見る。残りはあと一枚だった。

 これを適当に誰かに渡して今日の仕事はおわり。
 そう考えた俺は、あてもなくぶらぶらと歩く。
 と、前方に緑の芝生と階段が見えた。

「河川敷か。けっこう歩いてきてたんだな」

 俺は河川敷へと向かう。いまの時間なら夕日がきれいに見えそうだ。
 一日の終わりにちょうどいい。もし誰か人がいれば、その人に名刺を渡そう。

 土手の上を目指す。階段は少し離れていたので、芝生を昇っていった。革靴だと上りにくいのが難点だ。

「よっと……、実家の近くにもこんな土手、あったな……」

 ――アイツと、よく走り回ったっけ。芝生もしっかり管理されてはいなくて、草はぼうぼうに伸び放題だった。

 麦わら帽子がお気に入りだったアイツは、夏になるといつも河川敷でアイドルの撮影ごっこをしたがって、伸びた草のあいだから――

「……」

 脳裏にしまいこんだはずの記憶の泥が舞い上がりそうな気がして、俺は足元の草を見つめて、なにも考えずに河川敷を上った。

「…………バーーーッ!」

 すこし離れたところで元気のいい声がする。
 なにかスポーツでもやっているのかもしれない。

 この程度でも疲れる筋肉に運動不足を実感し、ようやく土手を登り切り、顔をあげたところで――

「ボンバーーーーッ!」

「!?」

 右耳に鼓膜を突き破りそうな大きな声が飛び込んだかと思うと、つぎの瞬間、右半身に何かがぶつかるような強い衝撃。

「おわっ!」

「あっ!」

 ぶつかられた俺はそのまま斜め後ろ方向へとバランスを崩す。
 ――やばい。後ろは、いま上ってきた土手の坂道だ。



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