【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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7: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 21:33:19.47 ID:z+wGLY660
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「お姉さん、お美しいですね、よろしかったらちょっと話を聞いていただけませんか? あ、そうすか、すんません。……あ、そこのお嬢ちゃん、かわいいね? かわいいって言われない? 俺、アイドルのプロデュースしてて……急いでる? じゃ、名刺だけでも! 興味があったらでいいから……あ、すんませんでした」
名刺をひっこめて、去っていく女性の後ろ姿に向かって俺は軽く頭を下げる。
人通りの多いところで、カメラ映えしそうな女性を探しては声をかけ続け、一時間とすこし。
話を聞いてくれる人はゼロ。せいぜい数人が名刺を受け取ってくれたくらいだ。
「そりゃ、怪しすぎるしな……でも、じゃあ先輩はどうやってスカウトしてたんだろう」
俺はスカウトには同行していなかったから、そのノウハウは全くわからない。
先輩はふらっとでかけたと思えば、誰かをスカウトして帰ってきた。
どこでどうやって出会ったのかという、アイドルとはまるで縁のなさそうな淑女から、声をかけたら保護者に通報される危険すらあるんじゃないかという子どもまで。
そんな才能など持ち合わせていない俺は、場所を変えながら声掛けをつづけた。
声を張るのも疲れてきたので、ティッシュ配りのように、気軽い感じで名刺を配る方法に変えてみる。
それだけだと意味が判らないので、受け取ってもらえたら声をかけて追いかけ、新人アイドルのスカウト中であることを話す。
これでいくらかの名刺がはけた。どうがんばってもアイドルになれなさそうな人物も半分以上混ざっていたが。
「ま、名刺が切れるくらい声かけてくれば、仕事をしたっていう実績は作れるからな」
俺はそう口に出して、自分で大きく頷く。先輩の仕事ぶりを完全にコピーするのは不可能だ。
先輩だって、スカウトが上手くいかないことだってあるはず。
それなら、企画書のほうを直して、四人のユニットに軌道修正してデビューさせるだろう。
大事なのはアイドルユニットが完成され、俺が仕事をしたと証明できることだ。
足せないときは引いてみたらいい。あとで先輩が復帰してから追加してもらう手もある。
そう、先輩が戻るまでは『維持』ができればいい。
「あー、ちょっといいかな、きみ」
「はい?」
突然男性の声で話しかけられて、俺はそちらを振り向く――警官が立っていた。
「ちょっと通報があってね。このあたりで勧誘行為は困るなぁ」
「あ、はい……」
俺は小さくなって頭を下げる。
「そういうわけだから、よけいな仕事させないでね。はい、行って行って」
手のひらでここから去れとジェスチャーされ、俺は地面に置いていたカバンを持ちあげると、そそくさとそこを立ち去った。
不審者扱いされても文句は言えないが、気分のいいものではない。
ほんとうに、こんな世の中で先輩はどうやって路上でのスカウトを成立させているんだろうか。
俺は首を傾げた。
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