【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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6: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 21:31:33.11 ID:z+wGLY660
「先輩は、こいつになにか可能性を感じたってことか……? んっ」

 よく読むと、荒木比奈の名の横に小さく文字が印刷されている。

「……『スカウト予定』。……まさか」

 俺は書類を机の隅にまとめて、デスクの端末のキーを叩く。
 部署を問わず、美城プロダクションに所属するタレントの中から『荒木比奈』を検索。
 ……該当なし。誤字を避けるために『荒木比菜』『荒本比奈』『荒木*奈』、そのほか思いつく限りのことを試す。
 対象者をタレントではなく、全社員にまで広げる。
 ……が、該当はなかった。

「これからスカウトするってことかよ!」

 俺は声をあげて机を手のひらで叩いた。思ったより大きな音がして自分で驚く。
 プロデューサールームには俺しかいないし、外を誰かが歩いていても気にはされないだろうが。
 おそらく、先輩はオーディション審査で落選になったアイドルのうちの一人に白羽の矢を立てたんだ。
 あの先輩ならありえないことじゃない。

 これからの苦労を十数秒考えて、俺ははっとして封筒を探る。
 もう中にはなにも入っていない。机の隅にまとめた書類をもう一度改める。
 プロフィールシートは四枚しかない。

「ユニットは……五名だよな」

 企画書を読み返す。たしかに五名と書かれている。
 だとすれば、一人足りない。

「ということは……」

 俺は両目を手の甲で覆って椅子の背もたれに体重を預けた。

 先輩はまだユニットのメンバーのうち四人しか決めていない。
 あとの一人を、先輩はこれからゼロからスカウトする予定だったのだ。
 これも、先輩ならありえない話ではなかった。
 これまでも多くのアイドルを、信じられないようなところから発掘してきた。
 発掘して、プロデュースして、羽ばたかせてきた。

 それと同じことを、これまで雑用くらいしかしていない俺にしろと言われても、できるはずがない。

「……辞めたい、実家に帰りたい……」

 本音がだらだらと漏れた。だが、この状態ではさすがに辞められない。
 実家に帰っても、たま上京することくらいあるだろう。
 そういうときにびくびくせずに道を歩けるようでなければいけない。辞めるなら円満に辞めたい。

「でも、辞めないにしたって、こんな状況どうすりゃいいんだよぉー!」

 俺は頭を抱えて叫んだ。叫んだ拍子に、積み上げた書類が机から落ち、床中に散らばった。



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