【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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10: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 21:38:52.90 ID:z+wGLY660
「あ、待って!」

 俺は、その少女を呼び止めていた。

 理由は自分でもわからなかった。気づいたら、声をかけていた。
 声をかけた理由を、俺は声をかけた後から探していた。

「なんですかっ?」

 少女は立ちどまり、きょとんとした顔をする。

「これ、良かったら」

 名刺を差し出す。そう、これが目的だったはずだった。

「名刺、ですか? 美城プロダクション、プロデューサー……」

「アイドル、やってみない?」

「はぇ?」少女は間の抜けた声を発して、俺の顔と名刺とを交互にみる。「アイドル……?」

「そう、アイドル」

「アイドル……って何ですか?」

「は?」こんどは俺の口から間の抜けた声が出た。「えーと、あの歌ったり踊ったりする、あの」

「えっ」

少女は一瞬フリーズする。それから。

「えええええええええっ! 私が、アイドルーーーーーーーー!?」

 とっさに両手で耳をガードした。
 それでもなお鼓膜にビシビシ響いてくる大声は、河川敷に面したマンションの壁面に跳ね返ってあたりにこだました。

「あ、ははは」俺は両耳から手を離す。直に受けたら耳鼻科のお世話になるところだったかもしれない。「まぁ、興味があったらそこの名刺の番号に連絡してみてよ」

「でっ、でも! わたしがアイドルなんて! そういうのは、もっと、そう! もっとかわいい女の子とかが!」

「その点は大丈夫だと思う、キミはかわいいから」

 その言葉は本音だったためすっと出た。
 アイドルの魅力は必ずしも見た目の良さだけではないが、普段からアイドルや芸能人を見慣れている自分から見ても、この少女の容姿は平均から群を抜いて光っている。

 俺にとっては単なる本音だったが、その言葉を聞いた少女のほうは再び、一瞬のフリーズ。そして、解凍。

「わっ、私が! カワイイなんて、そんな!」

 少女は大げさな動きで二、三歩のけぞり、顔を耳まで真っ赤にした。

「それに、すごく元気だし。その元気を、ステージで、テレビで、みんなに分けてあげたらいいんじゃないかって」

「あ、あ、あ」そこで少女の緊張は限界に達したようだった。「わ、私っ! ……しっししししし失礼しまーーーす! ああああーーーーっ! ファイヤーーーーーーッ!」

 少女は顔を真っ赤にしたまま、なにかを叫びながらその場から走り去った。

 しばらく、その後ろ姿を見つめていた。陽はだいぶ傾き、土手を風が通り抜ける。


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